上場企業の3社に1社の割合で不正が発生
   
カテゴリ:税務
作成日:11/09/2016
提供元:21C・TFフォーラム
  


 KPMGが上場企業を対象に7月に実施した「日本企業の不正に関する実態調査」結果(有効回答数376社)によると、2015年12月までの過去3年間に不正が発生したと回答した企業は約29%で、2010年の35%から比べて若干低下した。これは内部統制や内部監査等の管理体制の強化が進められた成果とみているが、依然として約30%の企業で不正が発生しており、不正は企業経営における大きなリスク要因となっている。

 発生した不正の内容は、2010年の結果と同じく、「金品・物品の横領」の割合が6割強で最多。何らかの不正が発生した企業の半数以上で横領が起きていることになる。この不正の行為者としては管理職以外の正社員が最も多く、またこれによる損失額は1000万円未満のケースが多かった。また、「取引先からのキックバック等」が横領に次いで多い結果となった。横領やキックバックにおいては約7割が1000万円未満の損失額だった。

 一方、3番目に多い「粉飾決算などの会計不正」は、横領系の不正と比較すると件数は少なかったものの、取締役や管理職が関与しており、一般に損失額が高額になる傾向がみられ、また、過年度の決算書訂正が必要とされることから社会的影響が大きい。会計不正のうち、8割超は「架空収益の計上」や「収益費用の期間帰属の操作」といった、売上高や営業利益を実態より良く見せるためのものだった。

 不正の発覚経緯は、2010年時の調査で最も多かったのは「内部通報」だったが、今回の調査で最も多かったのは「業務処理統制」(62%)であり、「内部通報」は47%にとどまった。「業務処理統制」による発覚経緯は2008年の約7%、2010年の約26%から継続して増加傾向にある。また、「会計不正」が発見されたと回答した企業が多く、これは内部統制の運用が浸透してきた結果とみられている。

 不正発覚時の調査体制については、「社内の人材のみで調査を実施」と回答した企業が68%、「外部専門家と社内の人材で調査を実施」が25%、「第三者委員会を設置」が7%だった。社内の人材のみで調査を実施と回答した企業が多数を占めるが、このうちの75%は1000万円未満の損失だった。不正の損失額が高額になるほど、外部専門家の起用や第三者委員会を組成した調査が行われている。

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