1.会計事務所M&Aとは

第 2回 M&Aの相談が急増!

 ここ数年の間に会計事務所のM&A相談が急激に増えています。当協会にも日々、さまざまな相談が寄せられています。

 これには大きく、3つの要因が考えられます。

(1)会計業界の変化
(2)税理士の高齢化
(3)M&Aに対する考え方の変化


(1)会計業界の変化

 現在の会計業界を見てみると、税理士法改正を機に競争が激化し、インターネットの普及により、顧問先の取り合いが生じています。

 以前の会計事務所は、極端なことをいうと、看板さえ出ていれば黙っていても紹介で顧問先が増えるという「自然増」でした。

 しかし、現在は黙っていると顧問先が廃業や倒産で減ってしまう「自然減」の時代に突入しています。戦略的に顧問先を増やすためのアクションを取っていない事務所は、売上も右肩下がりに減少していく一方です。

 こういった業界の背景が、M&A増加の要因として挙げられます。


(2)税理士の高齢化

 現在の税理士業界は高齢化が進行しています。下図にある通り、税理士の年齢構成を見てみると、60代以上が過半数を占めています。

 どんな人間も年齢には逆らえません。「自分はまだまだ業務を続けたい」と思いながらも、体力が低下したり、業務の複雑化についていけなくなったりと、以前と比べてパフォーマンスが落ちていくのは無理もない話です。

 それによってM&Aの相談が増えているのは、自然な流れと思います。

■グラフA 税理士の年齢層


(3)M&Aに対する考え方の変化

 今から10年ほど前に当社ではM&A研究会を発足しました。当時は、アメリカにおける会計事務所のM&A事例を紹介すると「顧問先を売るなんてとんでもない!」等と目くじらを立てる先生が多く、意識的にM&Aに嫌悪感を示す先生が大多数でした。

 しかし、先ほどお話しした「会計業界の変化」「税理士の高齢化」が影響し、以前のような「M&Aは後ろめたい」といった声はほとんど耳にしなくなりました。

 「事務所の状況が厳しくなり、手遅れになる前に、顧問先や職員をしっかりとした事務所に引き継いで守りたい」という考え方にシフトしてきたのです。

 中には「まとまったお金をもらって早く引退したい」「息子に継がせるのは忍びないので、他の事務所に引き継ぎたい」といった先生もいらっしゃいます。

 このような意識の変化により、会計事務所M&Aが当たり前に活用される時代に突入したといえるでしょう。