第78回 6要素解説 ― 安定性の視点(5)

■安 定 性

 「安定した経営とは何か」と聞かれてまず始めに頭に浮かぶのは、赤字にならないようにすることと思われます。赤字と黒字は、企業に対する見方が全く異なるからです。税務調査も申告所得ベースですが、黒字申告を重点的に行いますし、銀行も赤字企業に対する融資は避ける傾向にあります。その意味でも、どの水準を下回ると赤字になるのかを押さえておく必要があります。これが、損益分岐点の売上です。

 会社の費用構造を分析すると、売上と関係なく発生する固定費と、売上に比例して発生する変動費に分解することができます。この固定費を回収する最低限の売上が損益分岐点の売上で、現状の売上がその売上をどれ位上回っているかを明らかにするのが、経営安全率といわれるものです。

 企業は、これを意識した経営をすることが安定性にとって必須事項となります。そして、次に赤字回避ができたとして、次の安定性の課題が、対従業員問題と借入金問題です。企業の最も重要な経営資源が「ヒト」である以上「ヒト」の安定は、経営の安定の基礎となるはずです。この「ヒト」の安定性の指標として、労働分配率をあげています。

 更に経営の安定性をおびやかすものとして、借入金への抵抗力です。借入金対策は、安定した経営にとって避けられないものであり、そのため、借入金安全率、借入月商比率、預金対借入金比率が重要となります。

 ここでは、(1)経営安全率     (2)借入金安全率
      (3)債務償還可能年数  (4)借入月商比率
      (5)預金対借入金比率             をみていきます。




(5)預金対借入金比率

 企業の資産の中で最も流動性の高い(現金化しやすい)のは、いうまでもなく現金預金です。「借入金のうちどれくらいを直接返済できるか」を示していますので、企業の安定性を見る重要な指標です。

 借入金の返済は日々の売上の中から捻出するわけですが、この指標は売上がなくてもどれだけ返済する余裕があるか」を見ることになります。

 企業の立場からすると、現金預金の大小を判断する指標ですが、銀行の立場からするとこの指標が高いということは、「いいお客さん」ということになります。定期預金があることによって、それを担保として新たな借入(一般的には定期預金の9割までなら無条件で借りられる)が起こせます。そういう意味でも預金と借入金が両方あるという状態が見受けられることもありますが、「当座の用に備えるために、預金を確保しておきたい。金融機関に見捨てられないために、借入の実績を残しておきたい。」というような考えはお勧めできません。企業経営の安定化を図るためには、なるべく流動性の高い資産が多い方が良いのです。とくに、景気が良くない状況や企業の業績が下降気味のときは、できる限り借入金の返済を進めることが大切です。


 是非、この機会に決算診断をしてみては、いかがでしょうか。





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