第72回 6要素解説 ― 安定性の視点(4)

■安 定 性

 「安定した経営とは何か」と聞かれてまず始めに頭に浮かぶのは、赤字にならないようにすることと思われます。赤字と黒字は、企業に対する見方が全く異なるからです。税務調査も申告所得ベースですが、黒字申告を重点的に行いますし、銀行も赤字企業に対する融資は避ける傾向にあります。その意味でも、どの水準を下回ると赤字になるのかを押さえておく必要があります。これが、損益分岐点の売上です。

 会社の費用構造を分析すると、売上と関係なく発生する固定費と、売上に比例して発生する変動費に分解することができます。この固定費を回収する最低限の売上が損益分岐点の売上で、現状の売上がその売上をどれ位上回っているかを明らかにするのが、経営安全率といわれるものです。

 企業は、これを意識した経営をすることが安定性にとって必須事項となります。そして、次に赤字回避ができたとして、次の安定性の課題が、対従業員問題と借入金問題です。企業の最も重要な経営資源が「ヒト」である以上「ヒト」の安定は、経営の安定の基礎となるはずです。この「ヒト」の安定性の指標として、労働分配率をあげています。

 更に経営の安定性をおびやかすものとして、借入金への抵抗力です。借入金対策は、安定した経営にとって避けられないものであり、そのため、借入金安全率、借入月商比率、預金対借入金比率が重要となります。

 ここでは、(1)経営安全率     (2)借入金安全率
      (3)債務償還可能年数  (4)借入月商比率
      (5)預金対借入金比率             をみていきます。




(4)借入月商比率

 借入月商比率は借入回転期間とも呼ばれ、金融機関に依存している資金が月商の何ヶ月分あるか、売上高によって何ヶ月後に完済できるか、を表わしています。この比率が低いほど、自給自足の度合いが高い、と評価できます。

 企業の一般的な借入金余力の目安としては、サービス業で2.5ヶ月、販売業で3ヶ月、建設業で3.5ヶ月、製造業で4ヶ月程度が、企業経営を健全に維持できるボーダーラインとされています。この値を超えて借入金が過大となり、返済のために新たな借入を発生させるようなこと経営は非常に危険です。

 借入月商比率は金融機関から見ると、新たな融資が可能かどうかの判断指標の一つとなっています。


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