第71回 6要素解説 ― 資金性の視点(4)

■資 金 性

 企業経営にとって、最後に頼りになるのは、「お金」であり、「お金」がなければ、いかに多くの財産をもっていようと、いかに多くの売上があろうと、「支払不能」の可能性は否定できません。「勘定あって銭足らず」といわれるように、企業倒産の引き金になるのは、いつでも「お金」の問題です。

 企業経営は、「お金」に始まって(金銭出資で会社設立のスタートをきる)、「お金」で終わり(会社解散、精算の時は全ての財産を資金化して、残余財産としてお金を分配する)「お金」の切れ目(支払不能)で信用不安や、倒産になります。一般に「企業が倒産した」というのは、債務超過という状況を言うのではなく、支払不能の状況をいい、手形の決済日に不渡手形を出せば、銀行取引停止処分となり、事実上の倒産とみなされます。その意味で「お金」の流れをスムーズにしていくことは、人間の血液の流れと同じく、企業経営にとって不可欠となります。

 ここでは、(1)総資本回転日数    (2)受取勘定回転日数
      (3)棚卸資産回転日数   (4)固定資産回転日数
      (5)支払対受取回転日数比              をみていきます。




(4)固定資産回転日数

 固定資産回転日数は、固定資産がどれだけ有効活用されているかを表わすものです。設備投資したお金を売上として回収するまでの日数を示しており、この日数が短いほど効率よく設備を活用していることになります。

 固定資産回転日数は短いほど資産が活用されていることを表します。反対に日数が長いほど過大投資が行なわれていることになります。固定資産は購入したその年度に資金がドンと支出され、その後、長期にわたって生産活動や販売活動に利用されます。生産活動や販売活動は売上を産む基礎であり、その売上によって、当初「ドンと支出」された資金が「少しずつ回収」されることになります。

 固定資産の回転日数が長い場合、減価償却をカバーするだけの収益力をあげていないことになります。当初の設備投資が過大ではなかったか、現時点で固定資産が十分に活用されていないのではないか、といった原因が考えられます。ただ、気をつけなければいけないのは、固定資産は簿価を使用します。簿価とは帳簿上の価格を略したもので、取得価格から減価償却の累計額を控除したものです。

 もし、設備投資を行なわなければ、その年の減価償却費の分だけ簿価が減少し、売上高が横ばいでも回転日数は短くなります。業績は低迷していても、見かけ上資産効率が良くなったような印象を与えます。





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