第70回 6要素解説 ― 生産性の視点(4)

■生 産 性

 企業は、利益獲得のために様々な活動をしていますが、この利益中心主義の発想だけでは、必ずしも企業評価を十分に行うことはできません。この企業活動を、社会から様々な財貨、サービスを受け入れ、それにプラスアルファー(付加価値)をして、社会に還元するという生産活動に着目したのが、「生産性」です。

 特に、バランスシートには、企業の構成要素である「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」「技術」のうち、「モノ」「カネ」中心で、いくら稼いだかにばかり目がいきがちですが、「ヒト」や「技術」や「情報」といった、人的資産、知的資産等の無形資産の役割こそが、本当の稼ぎと考えるべきであり、従来の収益性をサポートする指標として、この生産性は重要です。

 この生産性は、付加価値の分配状況(労働分配率、資本分配率、租税分配率)を中心として見ることになりますが、経営効率で考えると絶対額でみるのではなく、従業員一人当りでみるべきです。そして、この従業員一人当りのいろいろな利益を考えるのも、経営効率としての生産性を考える際、大切です。

 ここでは、(1)一人当り付加価値  (2)一人当り営業利益
      (3)一人当り経常利益  (4)労働分配率
      (5)固定資産投資効率               をみていきます。




(4)労働分配率

 人件費というのは付加価値の中から支払われます。企業が顧客に与えることができた付加価値のうち、どのくらいが「ヒト」の部分で占められているか、という見方もできます。付加価値=売上高−変動費ですから、見方を変えると付加価値=固定費+経常利益となります。人件費は固定費の中で大きなウエイトを占めていますので、付加価値に占める人件費の割合が高くなると、経常利益が固定費に食われ、マイナスになってしまいます。その状態では、企業が「安定している」とはいえなくなります。

 企業の安定性という見方からすれば、労働分配率は低いほうが良いと言えます。しかし、事業の根底をなす「ヒト」の部分から見れば、低すぎると全体のバランスが悪くなってしまいます。


 是非、この機会に決算診断をしてみては、いかがでしょうか。





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