第66回 6要素解説 ― 安定性の視点(3)

■安 定 性

 「安定した経営とは何か」と聞かれてまず始めに頭に浮かぶのは、赤字にならないようにすることと思われます。赤字と黒字は、企業に対する見方が全く異なるからです。税務調査も申告所得ベースですが、黒字申告を重点的に行いますし、銀行も赤字企業に対する融資は避ける傾向にあります。その意味でも、どの水準を下回ると赤字になるのかを押さえておく必要があります。これが、損益分岐点の売上です。

 会社の費用構造を分析すると、売上と関係なく発生する固定費と、売上に比例して発生する変動費に分解することができます。この固定費を回収する最低限の売上が損益分岐点の売上で、現状の売上がその売上をどれ位上回っているかを明らかにするのが、経営安全率といわれるものです。

 企業は、これを意識した経営をすることが安定性にとって必須事項となります。そして、次に赤字回避ができたとして、次の安定性の課題が、対従業員問題と借入金問題です。企業の最も重要な経営資源が「ヒト」である以上「ヒト」の安定は、経営の安定の基礎となるはずです。この「ヒト」の安定性の指標として、労働分配率をあげています。

 更に経営の安定性をおびやかすものとして、借入金への抵抗力です。借入金対策は、安定した経営にとって避けられないものであり、そのため、借入金安全率、借入月商比率、預金対借入金比率が重要となります。

 ここでは、(1)経営安全率     (2)借入金安全率
      (3)債務償還可能年数  (4)借入月商比率
      (5)預金対借入金比率             をみていきます。




(3)債務償還可能年数

 借入金は、いやなものです。出来ればない方が良いし、あっても早く返済した方が安心であると考える人は多いと思います。借入金を「返済」という点ばかり見る人は、何かこわいものを背負っているイメージとなります。しかし、借入金によって調達した資金に着目すると、この「お金」をどうやって稼がせようか、資金の有効活用を考えるはずです。そうすると借入金をそんなに悪役のように考える必要はないかもしれません。要は、適度な借入金の状況を知ることなのです。身の丈に合った借入金とは、どの程度の水準を言うのでしょうか。借入金の返済可能年数に着目したのが債務償還可能年数です。借入金の返済原資は何でしょうか。利益又は、資産の売却が考えられますが、確実なのは利益の方です。それも資金的な裏付けのあるものでなければなりません。キャッシュフローを考えると減価償却費は資金流出のない費用なので、利益の一部と考えることができます。営業利益プラス減価償却費の合計で、何年で借入金の返済ができるのかを考えるのが、債務償還可能年数です。これは短ければ短い程、安定度が高いといえます。


 是非、この機会に決算診断をしてみては、いかがでしょうか。





Produced By
「決算診断」プロス
株式会社プロス