第65回 6要素解説 ― 資金性の視点(3)

■資 金 性

 企業経営にとって、最後に頼りになるのは、「お金」であり、「お金」がなければ、いかに多くの財産をもっていようと、いかに多くの売上があろうと、「支払不能」の可能性は否定できません。

 「勘定あって銭足らず」といわれるように、企業倒産の引き金になるのは、いつでも「お金」の問題です。

 企業経営は、「お金」に始まって(金銭出資で会社設立のスタートをきる)、「お金」で終わり(会社解散、精算の時は全ての財産を資金化して、残余財産としてお金を分配する)「お金」の切れ目(支払不能)で信用不安や、倒産になります。一般に「企業が倒産した」というのは、債務超過という状況を言うのではなく、支払不能の状況をいい、手形の決済日に不渡手形を出せば、銀行取引停止処分となり、事実上の倒産とみなされます。その意味で「お金」の流れをスムーズにしていくことは、人間の血液の流れと同じく、企業経営にとって不可欠となります。

 ここでは、(1)総資本回転日数   (2)受取勘定回転日数
      (3)棚卸資産回転日数  (4)固定資産回転日数
      (5)支払対受取回転日数比             をみていきます。




(3)棚卸資産回転日数

 商品を仕入れてから売れるまでの速度を示す指標です。資産効率の面から言えば、この日数が短いほど効率が良いということになります。

 棚卸資産回転日数には、二つの意味があります。

 一つ目は、平均日商の何日分の棚卸資産を在庫として抱えているか、を示すものです。これを手持ち期間といいます。二つ目は何日経過すれば、現在保有している棚卸資産が消費されてなくなるか、という日数を示しています。これを消費期間といいます。

 棚卸資産回転日数は、在庫の手持ち期間を表しているので、資産の運用が効率的に行われているかどうか、という観点からすれば、短いほうが良いに決まっています。棚卸資産回転日数が長期化している場合は、売れ行き不振、販売力以上の過大仕入れ、生産工程などの乱れなどがないかどうかのチェックが必要になります。

 ただし、在庫の手持ち期間があまりに短いと、品切れが発生します。材料であれば生産活動が停滞することになりますし、製品であれば販売活動に支障をきたすことになります。ここが受取勘定回転期間と違って、判断の難しいところです。

 在庫は企業経営において戦略的に持つものです。適性在庫(基準在庫)を定め、それに対応した仕入れ、生産、購買を進めることが重要です。


 是非、この機会に決算診断をしてみては、いかがでしょうか。





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