第62回 6要素解説 ― 成長性の視点(2)

■成 長 性

 企業が成長するとは、どのようなことをいうのでしょうか。そして、成長は、企業にとって、どのような意味をもっているのでしょうか。「成長なくして繁栄なし」と言われるように企業経営は、リスクとリターンの関係としてみる以上、常に「前進あるのみ」でなければ安心していられません。

 言葉としての安定、安心というものは存在しますが、成長の中にあってこその安定、安心といえます。その意味で「成長」こそ究極の企業目標といえます。それでは、何をもって成長というのでしょうか。まず比較時点として、「昨日より今日が良くなる」「今日より明日の方が良くなる」という、過去→現在→未来へと続く時系列の比較でとらえることができます。

 そして、成長とは何か。これについては、経営の量的拡大と質的拡大を分けて考えることができます。量的拡大には、企業規模の拡大であり、質的拡大は、企業規模の拡大を伴わない企業利益の拡大ととらえることができます。企業規模の拡大を売上の増加ととらえると、利益を伴わない売上増加は、量的拡大はもたらしますが、質的拡大にはなりません。

 この量と質の双方における企業の成長を考えていこうとするのが、成長性の問題です。

 ここでは、(1)売上高増加率   (2)付加価値増加率
      (3)営業利益増加率  (4)経常利益増加率
      (5)自己資本増加率              をみていきます。




(2)付加価値増加率

 付加価値率とは、売上から変動費を引いた金額がどれくらい増加したのかを一人当たりで示す指標です。

 一人当たり付加価値の増加率が上昇している状態というのは、企業経営において「販売効率が伸びている」「従業員の生産性が伸びている」という状態です。例えば、一人当たりの売上高が停滞していても一人当たり付加価値が伸びていれば、付加価値率が伸びて、より少ない仕入れ(原価)で、同じ売上を達成しているということになります。


 企業の成長過程において、「売上の増加が少なくても、効率よく儲ける組織作りを行なう」という時期は必要です。企業を取り巻く環境が厳しく、売上がなかなか伸びないときには、このような「体質転換」を行なうことが必要な時であるとも言えます。

 また、付加価値増加率は同じで売上増加率が伸びているという状況は、なるべく多くの顧客に対して販売を行う時期といえます。つまり、一人当たりの付加価値を下げても顧客数を拡大するという時期も必要なのです。

 どちらにしても、売上高の増加率を伸ばすか、付加価値増加率を伸ばすかということは、企業経営の未来に向かって、「今、自社に必要な取り組みは何なのか」という意思決定に基づいて行なうことです。この一年を振返って、「前期は、顧客を拡大した一年だった。だから来年からの三年間は販売効率を追求して、自社の基礎体力(儲ける力)を付けよう」とか、「前期は、販売効率を高めて、自社の基礎体力(儲ける力)もついたから、今期からは、新たなお客様を開拓する取組みをしよう!」という、未来に対する意思決定を行なうことが大切です。


 是非、この機会に決算診断をしてみては、いかがでしょうか。





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