第57回 6要素解説 ― 収益性の視点(2)

■収 益 性

 企業は、もともと利益獲得を目指して作られたものですから、利益を出さなければ企業とはいえません。利益獲得の達成度を見るのがこの「収益性」です。

 「収益性」には2つの見方があり、1つは、損益計算の結果として「利益」であり、2つは、外部購入給付(仕入・外注等の購入)に、新しい価値を付加したかという付加価値です。前者は、手持ちの財産をいかに有効に活用して利益を獲得したかという、財産との関係での稼ぎ方(総資本利益率、経営資本利益率、営業資本利益率)が中心となりますが、財産を何回、利用して稼いだか(資本回転率)、販売によってどれだけ稼いだか(売上高営業利益率、売上高経常利益率)を通して、企業の稼ぎ方が明らかになります。利益率や利益額は、大きければ大きい程良いと、一般的には言えますが、長期的発展を考えると、利益によって犠牲になったもの、余りに利益が大きいと、他社の参入といったリスクも発生するので、これだけでは、必ずしも十分な分析はできません。

 ここでは、(1)総資本経常利益率  (2)付加価値率
      (3)売上高営業利益率  (4)売上高経常利益率
      (5)売上高支払利息率               をみていきます。




(2)付加価値率

 付加価値って何でしょう。余り聞きなれない言葉ですね。経営分析の中心は、財産(貸借対照表)か利益(損益計算書)を中心に、その組合せばかりでしたので、付加価値という言葉は、少し異質かも知れません。決算書から直接出てくるものではありません。少し説明がいりますが、企業活動を財産や利益という視点とは別に、仕入先や外注先から購入したものにプラスアルファ(付加価値)を付け加えて、それを企業(取引先、お客様などの利害関係者)に分配(販売)する仕組みととらえることができます。すなわち、企業活動は、商品や原料といったものを外部から購入して、自社の労働力や技術力といった企業内の資源を投入して生産活動を行い、それによってプラスアルファとしての付加価値をつけて外部に販売する。そして、その付加価値活動の成果を従業員へは、給料、賞与という形で、資金提供者には、銀行への利息、株主への配当、国や地方公共団体に対しては、租税といった形で、分配を行う。

 この点からみて、企業が新たに生み出した価値としての付加価値こそ重要であり、収益力の基礎に、この付加価値力があります。付加価値率は、この付加価値が売上高に対してどれ位あるか。販売活動との関連で、どれ位の付加価値をあげられたかを明らかにするものであり、これによって、企業の分配可能力が明らかになります。1回の経済活動の水準を国際比較するときに利用されるのに、GDP(国内総生産)やGNP(国民総生産)というのがありますが、それらも国家レベルでのマクロの付加価値を表します。


 是非、この機会に決算診断をしてみては、いかがでしょうか。





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