第56回 6要素解説 ― 成長性の視点(1)

■成 長 性

 企業が成長するとは、どのようなことをいうのでしょうか。そして、成長は、企業にとって、どのような意味をもっているのでしょうか。「成長なくして繁栄なし」と言われるように企業経営は、リスクとリターンの関係としてみる以上、常に「前進あるのみ」でなければ安心していられません。

 言葉としての安定、安心というものは存在しますが、成長の中にあってこその安定、安心といえます。その意味で「成長」こそ究極の企業目標といえます。それでは、何をもって成長というのでしょうか。まず比較時点として、「昨日より今日が良くなる」「今日より明日の方が良くなる」という、過去→現在→未来へと続く時系列の比較でとらえることができます。

 そして、成長とは何か。これについては、経営の量的拡大と質的拡大を分けて考えることができます。量的拡大には、企業規模の拡大であり、質的拡大は、企業規模の拡大を伴わない企業利益の拡大ととらえることができます。企業規模の拡大を売上の増加ととらえると、利益を伴わない売上増加は、量的拡大はもたらしますが、質的拡大にはなりません。

 この量と質の双方における企業の成長を考えていこうとするのが、成長性の問題です。

 ここでは、(1)売上高増加率   (2)付加価値増加率
      (3)営業利益増加率  (4)経常利益増加率
      (5)自己資本増加率              をみていきます。




(1)売上高増加率

 まず、企業活動の基本が売上であることは、いうまでもありません。この売上が昨年に比べて増加しているか。増加しているとしてどの程度増加しているのか。一般的には、「今年は増収か」といわれるものです。企業の基本活動は、営業活動で、特に営業は、どの企業にとっても、不変性のある重要な活動です。

 この売上が昨年より大きいということは、売上=価格×数量ですので、価格UPか数量増加ということになります。いずれか又は双方がUPするときに、売上の増加となります。売上は、企業が提供する財貨、サービスが社会的に受入れられる過程ですので、社会的に要請があったことの重要な証明となります。

 しかし、この売上高増加率だけで、単純に喜ぶわけにはいきません。特に次の点には注意する必要があります。

 1つは、価格を引き下げて、数量増によって、売上をUPする場合です。いわば薄利多売というケースです。このケースは、利益を犠牲にした売上増ですので、長続きはしないと思われます。利益の伴わない売上の増加は、企業にとっては、プラスにならないものです。

 もう1つは、新製品、新店舗が生じたことによる売上増加です。この場合は、比較すべき前年度分がないので、その分が全て、今年度の売上増として組み込まれてしまうので比較可能性を失うことになります。このような場合には、既存品、既存店ベースでの売上比較が有効です。


 是非、この機会に決算診断をしてみては、いかがでしょうか。





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