第55回 6要素解説 ― 健全性の視点(1)

■健 全 性

 健全な会社とは、どのような会社をいうのでしょうか。健全な会社が「会社作り」の目標とされるのは何故でしょうか。健全な会社といえるためには、どのような指標を考えるべきでしょうか。人間の体でいえば、健康体、健康な体作りに相当するものです。病気になりにくい健康体は、人間の活動の基本といえます。人間作りの始めに体力作りがあり、体力作りの基本が健康体作りにあるように、会社作りの基本が健全性にあります。

 この健全性は、会社にとっての打たれ強さであり、常に何らかのリスクを覚悟しなければリターンを得ることはできません。よく言われる、「ハイリスク・ハイリターン」「ローリスク・ローリターン」の原則です。

 このうち、リスクについては、かなり深く、確実に予測することは、リターンに関する不確実性にくらべて、容易といわれています。このことは、会計上の原則としての保守主義(予想の収益は計上せず、予想の費用は見込んでおけ)や、「取らぬ狸の皮算用」といった諺にもでてきます。

 会社の発展の基礎に、このような「倒産しない会社」「倒産しにくい会社」が会社作りの基本にあります。その意味で、健全な会社とは、まず「倒産しない会社」「倒産しにくい会社」というイメージを持つことが重要です。この健全性の指標としては、(1)自己資本比率 (2)固定比率 (3)固定長期適合率 (4)流動比率 (5)当座比率 の5つが考えられます。

 ここでは、(1)自己資本比率   (2)固定比率
      (3)固定長期適合率  (4)流動比率
      (5)当座比率              をみていきます。




(1)自己資本比率

 バランスシートをよく見てください。左側(借方)と右側(貸方)が「はかり」のように、上手に均衡しているのがわかります。左側は、会社が保有している財産の総額です。この財産は、現金(資金)化しやすいものから、現金化しにくいものまでが、ずらーっと並んでいます。右側は、そのような財産が、どのようなルートで調達された資本によってもたらされたかをあらわしています。左側の財産の価格は、買った価格で記録されているもの(取得原価主義)から、現在の売却、回収価格で記録されているもの(時価主義)まで、様々な価格で付与されています。

 そして、これらの財産については、その換金性についてどのように考えるかが大切です。何故なら、全ての財産は、何らかの形で現金化できるものでなければならず(換金必要性)しかも一定の金額で換金できるものでなければ(換金可能性)なりません。

 何故、このような、換金必要性や換金可能性が必要かというと、バランスシートの右側を見るとわかります。右側は、負債と純資産に分かれています。この区別は、返済する必要があるか、ないかという基準で区別されます。負債は、長期か短期かは別として、必ず返済する必要がある項目であるのに対し、純資産の中心は、自己資本ともいわれ、返済する必要のない項目です。

 会社の安全度、健全度を考えると、会社が保有している財産のうち、返済する必要のある負債から調達したものが少ない程、逆にいうと返済する必要のない自己資本からできるだけ多く調達したものの方が、「返済リスク」が低くなることになります。この比率が「自己資本比率」です。総財産に占める、自己資本の割合です。

 つまり、自己資本と他人資本(負債)の合計によって調達された資産が、返済に充当されるとき、自己資本の割合が大きい程、他人資本の返済は、より一層保障されて安全性が増加という考え方がでてきます。銀行の人々が最も重視するのが、この指標です。銀行として貸した金が確実に返済されるのかをみるためです。


 是非、この機会に決算診断をしてみては、いかがでしょうか。





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