第54回 6要素解説 ― 安定性の視点(1)

■安 定 性

 「安定した経営とは何か」と聞かれてまず始めに頭に浮かぶのは、赤字にならないようにすることと思われます。赤字と黒字は、企業に対する見方が全く異なるからです。税務調査も申告所得ベースですが、黒字申告を重点的に行いますし、銀行も赤字企業に対する融資は避ける傾向にあります。その意味でも、どの水準を下回ると赤字になるのかを押さえておく必要があります。これが、損益分岐点の売上です。

 会社の費用構造を分析すると、売上と関係なく発生する固定費と、売上に比例して発生する変動費に分解することができます。この固定費を回収する最低限の売上が損益分岐点の売上で、現状の売上がその売上をどれ位上回っているかを明らかにするのが、経営安全率といわれるものです。

 企業は、これを意識した経営をすることが安定性にとって必須事項となります。そして、次に赤字回避ができたとして、次の安定性の課題が、対従業員問題と借入金問題です。企業の最も重要な経営資源が「ヒト」である以上「ヒト」の安定は、経営の安定の基礎となるはずです。この「ヒト」の安定性の指標として、労働分配率をあげています。

 更に経営の安定性をおびやかすものとして、借入金への抵抗力です。借入金対策は、安定した経営にとって避けられないものであり、そのため、借入金安全率、借入月商比率、預金対借入金比率が重要となります。

 ここでは、(1)経営安全率     (2)借入金安全率
      (3)債務償還可能年数  (4)借入月商比率
      (5)預金対借入金比率             をみていきます。




(1)経営安全率

 赤字経営となるか、黒字経営となるかは、経営における死活問題といえます。公共工事の受注における国や地方公共団体おける指名扱いや、銀行への融資申込等において、赤字か黒字かは、単に経営問題をこえて、企業の死活問題があります。赤字、即企業倒産というわけではありませんが、赤字は、企業倒産への一里塚であり、3期連続赤字だと、取引先その他に対する信用不安をもたらします。すなわち、赤字ということが、企業倒産の予兆と言う意味で重要な指標となります。

 そこで、どの程度の売上高があれば赤字にならないかを知ることが、経営管理上不可欠となります。その水準をクリアーすることが、赤字経営の回避のために絶対条件となるからです。そこで、経営をしていく上で、必ずかかる費用を2つに分けて、売上に対応して、増減していく費用(これを変動費という)と売上とは関係なく、必ず一定額の発生が不可避な費用(これを固定費という)の分類が大切になります。このうち固定費部分は、経営にとって絶対的な費用ですので、この固定費を回収できる売上高とはどんなものか。これが損益分岐点の売上高といわれるものです。

 まず、これを押さえておいて、現実の売上高がこの損益分岐点の売上をどれ位上回っているかを明らかにしようとするのが、経営安全率(売上減少に備える余裕度)です。この指標が高い程、赤字経営に陥らない余裕度を表しますので、経営安定度を知る上で重要な指標となります。


 是非、この機会に決算診断をしてみては、いかがでしょうか。





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