第53回 6要素解説 ― 資金性の視点(1)

■資 金 性

 企業経営にとって、最後に頼りになるのは、「お金」であり、「お金」がなければ、いかに多くの財産をもっていようと、いかに多くの売上があろうと、「支払不能」の可能性は否定できません。「勘定あって銭足らず」といわれるように、企業倒産の引き金になるのは、いつでも「お金」の問題です。

 企業経営は、「お金」に始まって(金銭出資で会社設立のスタートをきる)、「お金」で終わり(会社解散、精算の時は全ての財産を資金化して、残余財産としてお金を分配する)「お金」の切れ目(支払不能)で信用不安や、倒産になります。一般に「企業が倒産した」というのは、債務超過という状況を言うのではなく、支払不能の状況をいい、手形の決済日に不渡手形を出せば、銀行取引停止処分となり、事実上の倒産とみなされます。その意味で「お金」の流れをスムーズにしていくことは、人間の血液の流れと同じく、企業経営にとって不可欠となります。

 ここでは、(1)総資本回転日数    (2)受取勘定回転日数
      (3)棚卸資産回転日数   (4)固定資産回転日数
      (5)支払対受取回転日数比              をみていきます。




(1)総資本回転日数

 会社経営は、手持ちの資金をスタートとして、それを販売、サービスの購入にあて、それらを販売して再び資金の回収を図るという一連の流れとみることができます。手持ちの資金を、1年間で1回しか利用しなかった人と、1年間に10回も利用した人とでは、同じ資金でも10倍の違いが生じます。お金を働かせる回数の差は、お金そのものの保有の差に匹敵します。

 総資本回転日数は会社が保有している総資本を、1年間でどれ位回転したか(総資本回転率)ということを、売上高に換算して、その回転日数を考えるものです。全ての資産は、何らかの形で、企業の基本的な目的(生産活動、販売活動、財務活動、管理活動)に貢献するものでなくてはなりません。貢献しない資産は、不要な資産であり、企業にとってお荷物資産となります。

 このお荷物資産かどうかの判定として、総資産の資金化の状況把握が重要です。

 経営指標の中心といわれる、総資本利益率といわれるものがありますが、これを分析すると次の様になります。

 総資本経常利益率=利益/総資本 = 売上高/総資本
(総資本回転率)
× 経常利益/売上高
(売上高経常利益率)

 すなわち総資本経常利益率を高めるためには、総資本回転率を高めるか、売上高経常利益率を高める必要がありますが、その一方が、総資本回転率です。この総資本回転率を日数計算に換算したものが総資産回転日数です。これが、総資本全体の資金化状況を把握する重要な指標となるのです。これによって、不良資産、不稼動資産といった利益に貢献しない資産の存在が明らかになります。


 是非、この機会に決算診断をしてみては、いかがでしょうか。





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