■収 益 性
(1) 総資本経常利益率 企業活動は、一定の財産をスタートとして(元手)これを、いかに有効に活用して稼ぎ出し(利益)財産を貯蓄していったか。これが、最も重要な企業活動の指標といえます。 いかに稼いだか(利益)、いかに財産を増やしたか(自己資本)ということです。 損益計算書を見ればわかりますが、この稼ぎ(利益)には、種々の段階があり、稼ぎ(利益)の質的な違いに注目して、売上総利益、営業利益、経常利益、税引前当期純利益、当期純利益といった風に分類されています。 売上総利益は、販売という直接的な活動によってもたらされる利益であり、営業利益は、営業活動によってもたらされる利益であり、経常利益は、企業の正常な経営活動によってもたらされる利益です。ここまでの利益は、企業活動が毎期反復、継続して営まれる結果としての利益ですので、将来へのある程度の予測可能性をもちます。 これに対して、税引前当期純利益や当期純利益は、税金支払前か後かの違いがありますが、最終的な利益ですので、企業活動全ての結果によって発生するものです。そのため事故や事件等、偶発的な事象があった場合や、経営活動と直接的な関連のない事象が全て含まれてしまいます。その意味で毎期、反復継続するものだけではないので、将来への予測可能性は、低いといえるでしょう。 ところで、この利益の原動力となるものが、販売活動(売上)であることは、いうまでもありません。そして、この販売活動(売上)の原動力となるものが、手持ちの財産力です。手持ちの財産を元にして、仕入や製造を行い、そのまま販売したり、材料を加工しての製品に転換して、それを販売していくのです。そして、この販売の結果として、再び財産が増えるという循環が経営の連続的な活動といえます。 財産(元手としての財産) → 財産の有効活用(販売可能な物への転換) → 販売活動 → 利益の獲得 → 財産の増加 という一連の流れこそ、経営のあるべき姿です。 このような姿を見る指標として、「総資本経常利益率」というものがあります。 会社の財務指標の中で1つだけをあげよ、と言われるときは、必ず言われるのがこの指標です。これによって会社は、保有する全財産で、どれだけの利益を稼いだかが明らかにされます。会社が保有する全財産(総資産、総資本)を基礎として、反復、継続した企業活動によってもたらされる利益(経常利益)が、どれ位あるかをみるのですので、無駄な財産や、利益を生まない財産が多くある場合や、利益の少ない企業は悪くなります。その意味で、総資本経常利益率は、全体としての会社の総合的な収益力をみるには適しています。しかし、これだけをみても、会社をどのようにしていくのか、という将来展望力が直ちに出てくるわけではありません。従って他の分析数値も併せて考えていく必要があります。 是非、この機会に決算診断をしてみては、いかかでしょうか。
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