第51回 6要素解説 ― 収益性の視点(1)

■収 益 性

 企業は、もともと利益獲得を目指して作られたものですから、利益を出さなければ企業とはいえません。利益獲得の達成度を見るのがこの「収益性」です。

 「収益性」には2つの見方があり、1つは、損益計算の結果として「利益」であり、2つは、外部購入給付(仕入・外注等の購入)に、新しい価値を付加したかという付加価値です。前者は、手持ちの財産をいかに有効に活用して利益を獲得したかという、財産との関係での稼ぎ方(総資本利益率、経営資本利益率、営業資本利益率)が中心となりますが、財産を何回、利用して稼いだか(資本回転率)、販売によってどれだけ稼いだか(売上高営業利益率、売上高経常利益率)を通して、企業の稼ぎ方が明らかになります。利益率や利益額は、大きければ大きい程良いと、一般的には言えますが、長期的発展を考えると、利益によって犠牲になったもの、余りに利益が大きいと、他社の参入といったリスクも発生するので、これだけでは、必ずしも十分な分析はできません。

 ここでは、(1) 総資本経常利益率  (2) 付加価値率
      (3) 売上高営業利益率  (4) 売上高経常利益率
      (5) 売上高支払利息率               をみていきます。




(1) 総資本経常利益率

 企業活動は、一定の財産をスタートとして(元手)これを、いかに有効に活用して稼ぎ出し(利益)財産を貯蓄していったか。これが、最も重要な企業活動の指標といえます。

 いかに稼いだか(利益)、いかに財産を増やしたか(自己資本)ということです。

 損益計算書を見ればわかりますが、この稼ぎ(利益)には、種々の段階があり、稼ぎ(利益)の質的な違いに注目して、売上総利益、営業利益、経常利益、税引前当期純利益、当期純利益といった風に分類されています。

 売上総利益は、販売という直接的な活動によってもたらされる利益であり、営業利益は、営業活動によってもたらされる利益であり、経常利益は、企業の正常な経営活動によってもたらされる利益です。ここまでの利益は、企業活動が毎期反復、継続して営まれる結果としての利益ですので、将来へのある程度の予測可能性をもちます。

 これに対して、税引前当期純利益や当期純利益は、税金支払前か後かの違いがありますが、最終的な利益ですので、企業活動全ての結果によって発生するものです。そのため事故や事件等、偶発的な事象があった場合や、経営活動と直接的な関連のない事象が全て含まれてしまいます。その意味で毎期、反復継続するものだけではないので、将来への予測可能性は、低いといえるでしょう。

 ところで、この利益の原動力となるものが、販売活動(売上)であることは、いうまでもありません。そして、この販売活動(売上)の原動力となるものが、手持ちの財産力です。手持ちの財産を元にして、仕入や製造を行い、そのまま販売したり、材料を加工しての製品に転換して、それを販売していくのです。そして、この販売の結果として、再び財産が増えるという循環が経営の連続的な活動といえます。

財産(元手としての財産) →  財産の有効活用(販売可能な物への転換) →
販売活動 →  利益の獲得  →  財産の増加

という一連の流れこそ、経営のあるべき姿です。

 このような姿を見る指標として、「総資本経常利益率」というものがあります。

 会社の財務指標の中で1つだけをあげよ、と言われるときは、必ず言われるのがこの指標です。これによって会社は、保有する全財産で、どれだけの利益を稼いだかが明らかにされます。会社が保有する全財産(総資産、総資本)を基礎として、反復、継続した企業活動によってもたらされる利益(経常利益)が、どれ位あるかをみるのですので、無駄な財産や、利益を生まない財産が多くある場合や、利益の少ない企業は悪くなります。その意味で、総資本経常利益率は、全体としての会社の総合的な収益力をみるには適しています。しかし、これだけをみても、会社をどのようにしていくのか、という将来展望力が直ちに出てくるわけではありません。従って他の分析数値も併せて考えていく必要があります。


 是非、この機会に決算診断をしてみては、いかかでしょうか。





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