第37回 経営分析解説―安定性(1)

 経営者にとって「決算書」の見方のポイントを更に分り易く、解説していきます。是非、この機会に「決算書」が経営者にとって身近なものにしていただきたいと思います。


【 安定性 】

 その企業にとって様々な不幸があってもぐらつかない。そして必要な時に必要な資金が無理なく用意できる。このような財務的な安定度を捉えるための要素のことを「安定性」という。


(1) 経営安全率 (%)
不況に耐える力(売上の余裕度)を示します。

売上高−損益分岐点売上高  ×100
売上高

(2) 労働分配率 (%)
儲け(稼ぎ高)の中でいくら給与になっているかを示します。

人件費  ×100
付加価値

(3) 借入金依存度 (%)
投下資本がどれ位借入に依存しているかを示します。

借入債務  ×100
総資本

(4) 借入月商比率 (ヶ月)
借入債務が売上高の何倍かを表し、借入のバランスを示します。

借入債務
売上高(月額)

(5) 預金対借入金比率 (%)
当座の返済能力を示します。

現金預金  ×100
借入金


決算診断提案書における安定性の分析指標

(1)経営安全率(経営環境への対応力)

  売上高−損益分岐点売上高  ×100 (%)
売上高

で計算します。

理解するためのポイント
 赤字に転落するボーダーラインの売上水準(損益分岐点売上高)に対して、現在の売上高がどの程度高い水準にあるのか示している。この値が高いほど、余裕度が高く多少売上が下がっても赤字にはならない。現在が赤字であればこの値はマイナスである。

この分析項目の水準を高めるためのポイント
・売上を伸ばす。
・損益分岐点売上高を下げる。(固定費を下げるか、変動費率を下げる。)


(2)労働分配率(人件費と稼ぎ高のバランス)

  人件費  ×100 (%)
付加価値

で計算します。

理解するためのポイント
 付加価値のどれくらいを人件費として労働に分配されているかを示す指標である。この値が低いほど利益が出しやすく、高いほど利益が出にくい。しかし、労働分配率は人材の確保、従業員の勤労意欲などに関係してくるので、低ければ良いと一概に言えるものではなく各企業の過去の経験値や、同業種の平均値と比較して分析する必要がある。

この分析項目の水準を高めるためのポイント
・利益を出すには値を低くする。
・売上を伸ばす・付加価値率を高める・給料の削減。
注意点として労働分配率を高めている要因が人件費と付加価値額のどちらなのかを見極め、適正な水準であることが望ましい。


 是非、この機会に決算診断をしてみては、いかかでしょうか。





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