第36回 経営分析解説―資金性(2)

 経営者にとって「決算書」の見方のポイントを更に分り易く、解説していきます。是非、この機会に「決算書」が経営者にとって身近なものにしていただきたいと思います。

 前回、【資金性】は、どのようなものなのか解説し、(1)総資本回転日数、(2)受取勘定回転日数 の解説してまいりました。引き続き【資金性】の分析項目を解説していきます。


【 資金性 】

 投下した資本がどれだけ効率的に売上に結びついているか、その回収速度はどうなのか、資金面で余裕のある取引構造になっているのかいないのかを捉えるための要素である。


決算診断提案書における資金性の分析指標

(3)棚卸資産回転日数(棚卸資産の足の早さ)

  365 ÷ 売上高 (日)
棚卸資産

で計算します。

理解するためのポイント
 商品を仕入れてから売れるまでの足の速さを示す指標であり、この日数が短いほど資産効率が高い。商品別にこの比率を分析すれば、活き筋と死に筋商品、不良在庫が発見できる。

この分析項目の水準を高めるためのポイント
 市場性を考えた商品別販売計画をたて、基準在庫高を決め、それに対応した(過不足なく)仕入れ、生産、購買を進める。長期滞留の棚卸資産の処分、生産方式を見直し長期滞留を防ぐ。


(4)固定資産回転日数(固定資産の売上貢献度)

  365 ÷ 売上高 (日)
固定資産

で計算します。

理解するためのポイント
 設備投資したお金を売上として回収するまでの日数を表しており、この日数が短いほど効率よく設備(固定資産)を活用していることになる。なお、リースの利用を増やすことで日数を短くすることができるが、実質的には資産と負債が増えたのと同じであることから、本質的な問題解決にはならない。

この分析項目の水準を高めるためのポイント
過剰設備や遊休施設など有効活用されていない物については売却などによりスリム化する。
・各資産の稼動率を高める。


(5)支払対受取回転日数比(回収と支払のバランス)

  365 ÷ 売上高 ÷ 365 ÷ 仕入高 (1対)
受取勘定 支払勘定

で計算します。

理解するためのポイント
 受取勘定の回収状況と、支払勘定の支払い状況のバランスを示している。この値が1.0を越えれば、受取りよりも支払いが先行し、1.0未満であれば支払いよりも受取りが先行していることを意味する。よって、この値が小さい程、資金面で余裕のある取引構造になっている。

この分析項目の水準を高めるためのポイント
現金売上の比率を高めたり、受取手形のサイトを短縮するなど、売上代金の回収期間を短くする。
仕入代金の支払までの期間を長くするという策もあるが、仕入・購買価格・売れ筋商品の確保といった観点で問題がある場合も少なくないので、多面的な検討を行ったうえで進めるべきである。


 是非、この機会に決算診断をしてみては、いかかでしょうか。





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