第16回 貸借対照表のカンタンな見方(2)

 引き続き、経営者にとって「決算書」の見方のポイントを更に分り易く、解説していきます。
 是非、この機会に「決算書」が経営者にとって身近なものにしていただきたいと思います。



●重要な「正味運転資金」

 貸借対照表の各科目も、損益計算書の各科目と同じように、いろいろな経営分析指標を算出するのに使います。

 では経営者としては、貸借対照表をパッと見た時に何を読み取るべきかです。
経営者は、流動資産や固定資産、流動負債、固定負債、それに資本がどれくらい増えているか、あるいは減っているかをチェックするとともに、とにかく「正味運転資金」をつかんでください。流動資産と流動負債を見れば、自社の運転資金を把握することができます。流動資産から流動負債を引いたものが正味運転資金です。要するに、現在の短期負債を返済したあと、余裕資金がいくら残るかがわかります。

 正味運転資金が豊富にあれば、日常の資金繰りはラクです。しかし多額の不良在庫を抱えている場合、その不良在庫は流動資産の中に入っているので、その分は除外して考える必要があります。

 ここでもし、流動資産より流動負債のほうが多く、正味運転がマイナスになっているようなら、本当は運転資金に使うべきお金を設備投資に回しているか、業績が落ち込んで資金繰りに逼迫した事態といえます。また、流動資産と流動負債以外の部分、つまり固定資産、固定負債、資本の部からは、自社の設備資金をつかむことができます。


●貸借対照表の見方●


 長期的に使うことで利益が生まれてくる土地や建物などの固定資産は、自己資本で賄われることが一番です。しかしそんな会社はなかなかありません。そこで少なくとも固定資産は、すぐに返す必要のない長期的な資金、つまり固定負債で賄われている必要があります。

 「固定資産」と「固定負債・自己資本」の関係がアンバランスだと(固定資産のほうが固定負債・自己資本より多かったり)、固定資産への投資が過大だということです。その投資の回収に手間取ったりすると、みる間に資金繰りに詰まることになるので、注意が必要なのです。

 経営者としては、貸借対照表でとりあえず「正味運転資金」と「設備投資の状況」だけはつかんでおいてください。





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