第13回 損益計算書のカンタンな見方(2)

 引き続き、経営者にとって「決算書」の見方のポイントを更に分り易く、解説していきます。
 是非、この機会に「決算書」が経営者にとって身近なものにしていただきたいと思います。



●それぞれの「利益」は何をあらわしているか

 この損益計算書で、経営者がきちんと押さえておかなければならないのは、5つの「利益」の意味です。図を見て下さい。

利益の5段階の意味
科    目 収益力 ポ イ ン ト
 売上高
 売上原価
  期首製
  品棚卸高
  商品仕入高
  期末製品棚卸高
(1)売上総利益
開発力
販売力
商品力
(1)販売力強化
 ・得意先基盤の強化
 ・主力得意先の増強
(2)商品力強化
  ・主力商品の改善(交差比率の応用)
  ・高粗利商品の選定
(3)商品力強化・売れるモノづくり
 販売費・一般管理費
  発送費
  人件費(うち役員報酬)
  賃貸料
  減価償却費
  租税公課
  旅費交通費
  その他
(2)営業利益
管理力
営業力
(1)予算統制の実施
(2)経費1円当たりの生産性向上策
(3)コストカット策

 ・不要不急経費カット
(4)経費率の低減
(5)固定費の変動費化
(6)売れる店づくり
(7)売れる営業マンづくり
(8)知名度アップ宣伝方法
 営業外収益
  受取利息
  その他
 営業外費用
  支払利息割引料
  その他
(3)経常利益
資金力 (1)自己資金と借入金のバランス
(2)借入金利率の低減
(3)資金効率の向上策
(4)実質金利率の検討
(5)キャッシュフロー
(6)経常収支比率
 特別利益
  投資有価証券売却益
  減価変動準備金戻入
 特別損失
  固定資産除却損
  価格変動準備金繰入
(4)税引前利益
ストック力 (1)投資有価証券等の売却
(2)将来への準備、ストック対策の検討
(3)不要不急資産の整理
 法人税、住民税、事業税
(5)税引後利益
納税力 (1)節税対策


 まず(1)の売上総利益は、会社の「販売力・商品力・開発力」を示しています。ですから、売上総利益が低下傾向にあるのなら、販売力を強化したり、商品力を強化したりという手を打たなければなりません。

 (2)の営業利益は「営業力・管理力」をあらわしているので、これが低下している場合には、営業基盤の強化、予算統制の実施、生産性の向上やコストダウンに取り組む必要があります。

 (3)の経常利益は「資金力」を示しています。ですから経常利益が低下しているのなら、借入金を返済したり、資金効率やキャッシュフローの向上をはからなければなりません。

 (4)の税引前利益は、「ストック力」をあらわしています。これが低下傾向にあるということは、手元資金が不足しがちであることを示しているので、ストック全体の見直しをはかり、投資有価証券を売却するなどして余裕をもっておくことが必要です。

 (5)の税引後利益が示しているのは「納税力」です。ここでは、考えられる節税策をすべて打っているかどうかを再確認しなければなりません。

 このように経営者は、損益計算書の各段階の利益額を、三年間なら三年間の時系列で見て傾向を知り、対策を検討しなければならないのです。





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