第62回 中小企業は生き残りをかけて背水の陣!!

 中小企業の経営者の方は資金繰り受難の時代に生き残りをかけて必死の思いで、毎日の経営活動を行っていることと思います。自己資本の少ない中小企業にとって金融機関から見放されたらその時点で経営の危機に瀕してしまいます。

 現状でも、金融機関の貸し渋り・貸し剥がしにより、倒産の憂き目をみている中小企業が多く発生しています。

 そのような中小企業の資金繰り難を受け、金融庁は金融機関に中小企業の実態を踏まえた融資判断の徹底を求めるとの発表がありました。その具体的内容が、金融検査マニュアルの中に指針として出ています。

 特に、中小企業への融資に関しては、中小企業の経営状態を評価するためには、財務状態だけではなく、幅広い情報を活用し、きめ細かい実態把握に基づく柔軟な判断が必要で、中小企業の特性、経営状態や将来性を高く評価するための具体的な判断材料、運用例などを提示してあり、金融機関が中小企業への融資促進を図ろうとしています。

 個々の中小企業が金融機関から高く評価されるためには、この金融検査マニュアルの内容を熟知して対応をしていければ資金手当てを受けられる確率は高まってきます。金融機関が中小企業融資への判断ポイントは以下の5ポイントです。


1.中小企業と大企業は異なる扱い

 ● 中小企業の特性として

赤字になりやすい
景気の影響を受けやすく、一時的な収益悪化で赤字になりやすい

債務超過になりやすい
自己資本が小さいために、一時的な要因により債務超過に陥りやすい面がある

財務状況の回復に時間が必要
リストラの余地が小さく、黒字化や債務超過解消まで時間がかかることが多い

貸出期間が短い
長期の返済が適当な設備資金などの資金等についても契約上は短期の貸出とされ、返済期間が来ると再度貸出を行うケースが多い。


2.企業と経営者を一体として判断する。

 ● 中小企業の特性として

企業と代表者との財産や収入が一体
企業と代表者との財産や収入が一体となっている場合が多いことを踏まえて、経営状態を評価します。

  代表者からの借入金については、これを企業の負債ではなく、自己資本とみなすことができます。
  代表者への報酬や家賃の支払等により赤字になっており、借入金の返済資金を代表者が出している場合もあるので、機械的に返済能力がない企業と判断せず、赤字の原因や返済財源等の実態把握を行います。


3.技術力と販売力、成長性を重視する。

 ● 中小企業の特性として

企業の将来性に期待
技術力や販売力のある企業の将来性に期待し、現段階での決算等の数字のみにとらわれない柔軟な評価を行います。

  特許権、実用新案権等の知的財産を背景とした新規受注契約の状況や見込み
  新商品、サービスの開発や販売の状況を踏まえた今後の事業計画
  取扱商品・サービスの業界内での評判等を示すマスコミ記事等
  今後の市場規模や業界内シェアの拡大動向等
  販売先や仕入先の状況や評価、同業者との比較に基づく販売条件や仕入条件の優位性
  企業の技術力、販売力の関する専門家の評価


4.経営者の資質と経営努力を評価する。

 ● 中小企業の特性として

経営者がしっかりしていることが特に重要
経営者がしっかりしている企業の将来性に期待し、現段階での決算等の数字のみにとらわれない柔軟な評価を行います。

・過去の返済状況等の取引実績
・経営者の経営改善に対する取組み姿勢
・財務諸表などの質の向上への取組み状況
・ISO等の資格取得状況
・人材育成への取組み姿勢
・後継者の存在


5.経営改善への取り組みの評価をする。

 ● 中小企業の特性として

経営改善計画を大企業のように策定できない
中小企業は、大企業のような大部で精緻な経営改善計画を策定できない場合があります。経営改善計画を策定していない場合や経営改善計画を下回った場合でも、経営改善に向けた取組みが進んでいれば、これを高く評価します。

  今後の資産の売却予定、役員報酬や経費の削減予定、新製品の開発予定などに関する資料があれば活用します。
更に、企業の実態を踏まえて金融機関が作成・分析した経営改善のための資料についても活用します。
  経営改善計画を下回った場合であっても、計画を下回った要因(外部要因による一時的影響など)や今後の経営改善の見通しを加味して、経営改善計画の達成状況を考慮します。


 上記の5ポイントを踏まえて、中小企業経営者が金融機関の対応が出来るかどうかによって会社の資金繰り力は大きく違ってきます。

 独自で対応するのが困難な場合には、顧問会計事務所へ是非、ご相談をしてみてください。





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