第26回 「銀行」は社長の会社をどう見ているか? の事例紹介

 前回、「銀行」がどう企業を見ているか?を述べました。
 今回は「銀行」が実際、社長の会社をどう見ているか?についての事例を何例かご紹介します。

事例:その1

会社の概要

 (概況)
 不動産仲介、賃貸及び個人向け一般住宅分譲事業を行っている会社で、査定した「銀行」とはメイン先の関係である。

 (業況)
 景気低迷の影響から仲介物件や一戸建て分譲販売の減少から売上は下落傾向(決算数字は146百万)のため、ここ数年は赤字決算の計上が続いている。また、バブル期の分譲プロジェクト計画が頓挫して塩漬け状態になっている土地が多額の含み損を抱えており100百万の実質債務超過の状態である。査定した「銀行」からこのプロジェクト資金の融資を受けている。売上減少から元本の期日返済が滞っている状態が続いていたものを期日一括返済から長期間にわたる約定返済(社長の個人預金から)に切り替えた。

銀行の評価

 (査定)
 会社自体の決算書は長年赤字を計上しているので破綻懸念先であるが、社長が会社の有事に際しての私財提供の覚悟を評価して要注意先の判断を下している。

●一般的に「銀行」は上記の会社の例のように継続的赤字決算の財務内容で、借入返済が遅滞状態では破綻懸念先に相当すると判断する可能性が高い。その際、社長の個人資産等を勘案して最終判断をしている。中小企業の場合、社長の資力を法人・個人一体とみているといって過言ではないでしょう。


事例:その2

会社の概要

 (概況)
 社長以下5名の家電メーカー向けのプラスチック用金型を受注生産する業歴20年を超える金型製造業者である。査定した「銀行」100%のメイン関係である。

 (業況)
 景気低迷による金型需要の低下や家電メーカーの生産拠点の海外シフト等の影響から受注量が激減して、売上の減少傾向に歯止めがかからず、毎期赤字が続き債務超過(前期75百万)に陥っている状態。現在工作機械購入資金や材料仕入資金に「銀行」は応じているが、工作機械購入資金については条件変更による元本猶予が実施されている。

銀行の評価

 (査定)
 この会社は社長及び従業員2名が、この業界でも評判の腕前を持つ金型職人であり、社長が今までに取得した特許権及び実用新案権が数件、従業員が出願中の特許権が数件あることから、今後も家電メーカーからの受注がある程度確実に見込まれると判断して、要注意先と査定している。

●上記の会社の例のように、業況不振により連続して赤字を計上して、債務超過に陥っている会社は、今後、業況回復の可能性が低いと判断されると、経営破綻先に評価がされる可能性は高い。要注意先に判断された要員はこの会社が持っている高い技術力が今後も家電メーカーからの受注が期待できると「銀行」が判断したからである。


 今回、2つの事例を紹介しましたが、いかがだったでしょうか。

 中小企業は最終的には会社の経営状態がよくない場合、社長個人の資産状態等までが査定の状態にあります。また、独自の技術力を持っていかないといけないということは少しご理解していだけたでしょうか。

 要は、会社自体の経営体力を強化して「銀行」から高い評価を得られるようにしていくことが肝心です。

 そのために毎期の決算書をよく分析・評価・診断していく必要があります。





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