第18回 マネジメントパワーを高めていこう!!

 人事考課は業績評価と情意評価の二面性でみます。業績評価は売上高や新規顧客の獲得件数など、数字にあらわれた活動成果を評価するものです。それに反して情意評価は、リーダーシップや仕事に取り組む姿勢等の数字では把握しにくい行動成果を評価するものです。

 これと同じように、会社の経営にも、業績考課的な評価と情意考課的な評価があります。今まで、決算書のデータを分析、評価していろいろな角度から会社の状況等を掴んできました。経営の結果である決算書の数字を数値の置き換え、総合的に自己評価し、自己格付をしてきました。

 これらは業績考課ともいえる評価でした。会社の経営において業績考課的評価の対をなす情意的評価があると思います。それは経営者のモノの見方・考え方です。会社の行動成果は経営者のこのモノの見方・考え方によって大きく左右されます。経営者が会社の経営資源を有効に活用していくのか、経営の舵取りをうる上で重要な考えは何かなどを客観的に評価することはとても大切です。

 客観的に評価するために経営者のマネージメントパワー(経営力)診断があります。経営者の意欲や商品・サービス力、社員の人材力などのレベルを経営者の自己評価のもとに数値化してみるのです。

評価要素は・・・

1.経営者自身 ・・・ 経営者として日常行動の中での基本的事項の実践度合をみています。
   
1. 経営者自身が変化に対応し新しい発想で改善・改革を取り入れる経営をしていますか?
2. 経営者自ら先頭に立って、自社の強味、他社との差別化を図って行動していますか?
3. 情報データに基づいて、利益やコストに計数感覚を持って会社経営をしていますか?
4. 社員とのコミュニケーションを十分に図っていますか?
5. 会社の将来について、夢を描き、心から実現を信じていますか?
6. 自分を取り巻く様々な人脈を積極的に経営活動にも取り込んでいますか?

2.商品 ・・・ 自社の商品力を向上させるための施策・管理状況をみています。
   
1. 今後、自社で主力となる商品(サービス)を積極的・継続的に開発したり、又は探したりしていますか?
2. 今ある商品(サービス)に対して、より付加価値を付けるため積極的にその改善を図っていますか?
3. 顧客の満足度を高めるため、顧客が何を求めているのか、顧客の側に立って考えていますか?
4. 同業者のどこにも負けない商品(サービス)の差別化を図る為の努力をしていますか?
5. 競合商品(サービス)より自社商品(サービス)に顧客を引き付ける為のセールスポイントがあげられますか?
6. 商品力(サービス)の向上のため、同業他社の商品(サービス)と比較検討を定期的に行っていますか?

3.仕入 ・・・ ムダのない仕入を円滑に行い、原価を抑制できるような行動および管理状況をみています。
   
1. ライバル会社の仕入方法も効果的な情報として入手し、活用していますか?
2. 品質や価格を考え、仕入が行われるよう、仕入先開拓を積極的に行っていますか?
3. 仕入を経験や勘だけに頼らず、適正な数量コストを明確にして発注していますか?
4. 自社の適正在庫を把握して仕入を行っていますか?
5. コストの引き下げを常に念頭におき、ムダやロスをなくす行動をしていますか?
6. 仕入条件を定期的に見直し、自社にとって有利なように条件交渉を行っていますか?

4.販売 ・・・ 会社の力である「売上」増大にむけての活動状況をみています。
   
1. 年間・月間の営業(売上)目標をしっかりと立て、目標達成に向けて行動していますか?
2. クレームは最高の情報源ととらえ、クレームが発生したら何より優先して対応していますか?
3. 顧客管理を徹底して行い、新規の顧客作りに重点を置き、その固定客化を実行していますか?
4. 顧客の応対・商品知識などについての社員レベルを引き上げて、全社あげて顧客の満足度を高めていますか?
5. より営業実績をあげるため、効果的な広告活動を通じて、お客様の増大、
6. 顧客の立場に立ったコンサルティングセールス(提案営業)を積極的に行っていますか?

5.人材 ・・・ 社員の採用・教育、並びに定着を高めるための行動等が、計画的に行われているかをみています。
   
1. 社員に、コスト意識・顧客志向を持たせる努力をしていますか?
2. 社員の商品知識や計数感覚などのOJTや研修を計画的に行っていますか?
3. 社員に自分の役割を認識させて、社員の仕事ぶり・業績が、正しく評価される仕組みを作っていますか?
4. パート・アルバイトやシルバー・女性の活用を、積極的に図っていますか?
5. 職場内で良好な人間関係が築かれるような雰囲気を積極的に作っていますか?
6. 就業規則等の諸規定や福利厚生制度の労務環境を整備していますか?

6.財務 ・・・ 財務状況の把握と、健全財政にむけての行動の状態をみています。
   
1. 資金繰り表を作成し、それを十分に活用して資金繰りを行っていますか?
2. 年次・月次の利益目標をしっかりと立て、その目標達成にむけての行動計画を明らかにしていますか?
3. 銀行等金融機関に対して、資金繰り表や経営計画の提出等をして良好な関係を築くようにしていますか?
4. 月次データを基に現在の課題を明らかにしていますか?
5. 正確な分析データの作成の為には、正確な帳簿の作成が必要であると思っていますか?
6. 在庫や債権の回転率を高め、キャッシュフローを高めていますか?

7.経営管理 ・・・ 計画経営の実施および社風創りの取り組み具合をみています。
   
1. 年間の経営目標・計画を立て、社員に経営方針を知らせることをしていますか?
2. 立てた目標予算と実績との対比を必ず行い、検討を図っていますか?
3. 会議体系を整備し、目的・出席メンバーなどを明確にしていますか?
4. 時代に合った経営を推進するために、インターネット等の情報の活用やOA化での管理業務をすすめていますか?
5. 自社の社員の状況をきちんと把握し、より社風をよくするよう行動していますか?
6. 報告・連絡・相談(ホー・レン・ソー)が円滑にいくような仕組みを作っていますか?

8.危機管理 ・・・ 自社の取り巻く様々なリスクに対する管理状況をみています。
   
1. 全社として生命保険を活用し、家族の安心感を高めていますか?
2. 火災保険等の損保に加入し、不慮の事故に備えていますか?
3. 企業にはあらゆるリスクがついてくる。法的整備を行い相談相手を持っていますか?
4. 事業の承継および相続対策について必要があれば計画を立てて実行しますか?
5. 現在保有している財産を、より効果的に運用し、将来に備えるように実行していますか?
6. 常に成長が期待される事業分野への取り組みを検討し、経営計画にその進出を織り込んでいますか?


によってみていきます。これらの8要素の6項目の質問にアンケートによる自己評価をすることにより経営者のマネージメントパワーがどの位置にあるかが分かり、経営者ご自身の自己改善に役に立っていきます。次回からそれぞれの要素ごとについて解説をしていきます。





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