第17回 [成長性の向上]を実現するための改善課題は!!

 引き続き、6要素から自社の経営改善をするための課題について、説明をしていきます。
 今回は成長性です。


 人間に成長過程の若者と成長がストップした熟年がいるように、会社にも伸び盛りの若々しい会社と、伸びが止まった老いが目立つ会社があります。

 しかし、人間と会社には決定的に違うところがあります。
 人間の場合は、生まれて成長し、青年期、熟年期、高齢期を経てやがて死に至るというライフサイクルからは誰でも逃れることはできません。

 ところが会社の場合は、常に新陳代謝を行い、若返りの策を打つことで、常にみずみずしい企業体として、永続的に発展していくことが可能になるのです。

 そのためには、会社の経営資源である「ヒト」「モノ」「カネ」を毎年、継続的に、効率よく活用し、成長・発展に向けての活動を行わなければなりません。そうした活動がきちんと行われているかどうかを見るために【成長性】という評価項目があります。

 この【成長性】は会社が成長する上で欠かせない「バネの強さ」を測るものです。ただし、この【成長性】は売上高の伸びや従業員数の増え方で単純の評価するわけにはいきません。売上も社員数も急速に伸びて評判になった会社が、実は利益がほとんどなく、そのうちに姿を消していったケースは多くあります。 会社の「成長」にはバランスが必要なのです。【成長性】を評価するための経営指標は以下の通りです。

[成長性]を判定するのは、以下の5つの項目です。

(1) 一人当たり売上高の伸び  「一人当たり売上高増加率」 =

(当期売上高÷従業員数)−(前期売上高÷従業員数)  ×100
(前期売上高÷従業員数)

(2) 一人当たり稼ぎ高の伸び  「一人当たり付加価値増加率」 =

(当期付加価値÷従業員数)−(前期付加価値÷従業員数)  ×100
(前期付加価値÷従業員数)

(3) 一人当たり本業成果の伸び  「一人当たり営業利益増加率」 =

(当期営業利益÷従業員数)−(前期営業利益÷従業員数)  ×100
(前期営業利益÷従業員数)

(4) 一人当たり経営成果の伸び  「一人当たり経常利益増加率」 =

(当期経常利益÷従業員数)−(前期経常利益÷従業員数)  ×100
(前期経常利益÷従業員数)

(5) 自己資本強化度  「自己資本増加率」     =

(当期自己資本÷従業員数)−(前期自己資本÷従業員数)  ×100
(前期自己資本÷従業員数)

 ※  従事員数 ・・・ 役員数+従業員数
 自己資本 ・・・ 資本の部合計


 これらの判定結果によって「成長性の向上」を実現していくための改善課題で考えられるのは以下の通りです。


業種別(卸売業、小売業、サービス業、製造業、建設業、運輸業、飲食業) の
「成長性の向上」実現のための改善課題の表示(例)

卸売業 小売業 サービス業
商品開発力の強化
売上増加策の検討
情報力の強化
新規顧客の開拓
新ビジネスへの進出
販促によるシェア向上
販売店サポートの充実
協力業者との関係強化
人脈づくりの強化
中期経営計画の策定
 
商品力の強化
販売力の強化
情報ネットワーク構築
新規顧客の開拓
粗利益率の向上
新業態・出店の検討
職場環境の整備
計画的な人材育成
社風改善と活性化
中期経営計画の策定
 
ロイヤルユーザーの拡大
新規事業へのアプローチ
成長分野へのシフト
競合対策の推進
ニーズを先見する営業
新規顧客の開拓
計画的な人材育成
人脈づくりの強化
商品企画開発力の強化
中期経営計画の策定

製造業 建設業
成長分野へのシフト
作業環境の整備
情報ネットワーク構築
新規顧客の開拓
開発提案型営業の強化
技術・開発力の向上
顧客づくりの強化
計画的な人材育成
社風改善と活性化
中期経営計画の策定

 
多角化・拡本業戦略
工事現場の活用
情報収集方法の確立
リフォーム事業の強化
開発提案型営業の展開
競合対策の推進
イメージアップの推進
計画的な人材育成
工期短縮と競争力強化
中期経営計画の策定

運輸業 飲食業
多角化・新分野への進出
職場環境の整備
情報ネットワーク構築
新規荷主の開拓強化
品質・サービスの強化
計画的な人材育成
社風改善と活性化
開発営業の推進
経営方針の明確化・徹底
中期経営計画の策定
 
メニュー開発力の強化
職場環境の整備
情報ネットワーク構築
新規顧客の開拓
イメージアップの強化
対象顧客の多様化
顧客づくりの強化
計画的な人材育成
社風改善と活性化
中期経営計画の策定


 例えば、小売業の場合で、自社にとって安定性の判定からで、「販売力の強化」が課題であったとすると、以下のような検討項目が考えられます。


小売業「成長性向上」の改善課題(例)

課題テーマ 販売力の強化

課題のご提案
同地域内にある同レベル異業種との連携方式を検討し、広告宣伝・催事などを計画的に緻密に実施する。

施策の事例
(1) 地元の有力広告代理店等に、販売面で協力することで双方にとってメリットのある相手企業の紹介を依頼することを検討する。
    (2) 近くに立地する比較的客層の似ている異業種の店に共同販促等について提案することを検討する。


課題のご提案
DM、TEL、訪問などによりお客様とのコミュニケーションをとり来店や、催事への参加を促すことで攻めの営業へ転換する。

施策の事例
(1) 一定金額以上の品をお買い上げいただいたお客様には2日以内に必ず、サンキューレターを出すことを検討する。
    (2) 催事の前には、DM以外に必ず電話によるお誘いを行なうことを検討する。


課題のご提案
店頭販売主体から訪問販売・展示会販売・通信販売等、多角的な販売方法への展開ができないか検討し、それを実践に移す。

施策の事例
(1) 業界誌等により同業者や類似業種に於ける成功例の研究を行った上で、仕入業者等の意見も聞き企画の検討をする。
    (2) 仕入業者に店頭販売以外で成功を納めている企業の紹介を受け、見学や、話を伺う等により、研究を進める。





 決算書を分析・診断することにより、自分の会社の経営課題が明らかにされます。


 是非、顧問の会計事務所にご相談してみてください。





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