第15回 [安定性の向上]を実現するための改善課題は!!

 引き続き、6要素から自社の経営改善をするための課題について、説明をしていきます。今回は安定性です。

 会社の「安定性」を見る

 「安定性」によって、バランスのとれた経営が行われているかどうか、さらに会社を取り巻く経営環境の変化に耐えることのできる力がどれだけあるかの判定をできます。

 急成長したベンチャービジネスが倒産するケースがしばしばマスコミに登場することがあります。収益性は非常に高いものを持っているものの、自己資本が少ないために借入金への依存度が高く、経営抵抗力のない体質であるため、経営が破綻してしまうのです。

 会社に成長過程において、「安定性」に目をつむり、「収益性」の重点を置いた経営の舵取りをする時期があるかもしれません。

 しかし、その時は、常に危険と裏腹の状態であることを念頭にリスクヘッジを考えた経営をしていかなくてはなります。攻めと守りのバランスをとっていくことが肝心です。

 ですから、会社の未来を確かな軌道を描いて成長・発展に導くためには、基本的に極端な方向に片寄らない平衡感覚を保つことが大変重要です。

 「安定性」を見るポイントは

(1) 経営環境への対応力   (=経営安全率  で判定)
(2) 人件費と稼ぎ高のバランス   (=労働分配率  で判定)
(3) 投下資本の借入金依存度   (=借入金依存度  で判定)
(4) 売上高と借入金のバランス   (=借入月商比率  で判定)
(5) 借入返済の余裕度   (=預金対借入金比率  で判定)

です。これらの判定結果によって「安定性の向上」を実現していくための改善課題で考えられるのは以下の通りです。


業種別(卸売業、小売業、サービス業、製造業、建設業、運輸業、飲食業)の
「安定性の向上」実現のための改善課題の表示(例)

卸売業 小売業 サービス業
顧客第一主義の徹底
計数管理の徹底
動機づけのシステム作り
クレーム対応の強化
営業スキルの向上
回収と支払のバランス
金利負担の軽減
外部ブレーンの充実
オリジナル商品を持つ
労働分配率の改善
 
顧客第一主義の徹底
計数管理の徹底
動機づけシステム作り
販売コストの改善
販売技術力の向上
設備の効率的活用
労働分配率の改善
回収と支払のバランス
金利負担の軽減
人材の確保
 
採算を考えた広告の実施
営業スキルの向上
外部ブレーンの充実
顧客第一主義の徹底
固定費の見直し
動機づけのシステム作り
労働分配率の改善
回収と支払のバランス
金利負担の軽減
計数管理の徹底

製造業 建設業
顧客第一主義の徹底
計数管理の徹底
動機づけのシステム作り
生産コストの改善
生産技術力の向上
設備の効率的活用
労働分配率の改善
回収と支払のバランス
金利負担の軽減
法令順守の徹底

 
チェック機能の強化
固定費の見直し
動機づけのシステム作り
サービスの強化
粗利(付加価値)の向上
設計見積管理の徹底
労働分配率の改善
回収と支払のバランス
金利負担の軽減
受注構造の改善

運輸業 飲食業
荷主第一主義の徹底
計数管理の徹底
動機づけのシステム作り
コストダウンの強化
報連相の徹底
労働分配率の改善
回収と支払のバランス
金利負担の軽減
経費管理の徹底
共同化事業の活用
 
顧客第一主義の徹底
計数管理の徹底
動機づけのシステム作り
コストダウンの強化
報連相の徹底
PL対策の強化
労働分配率の改善
システム化の推進
金利負担の軽減
営業形態の見直し


 例えば、小売業の場合で、自社にとって安定性の判定からで、「回収と支払のバランス」が課題であったとすると、以下のような検討項目が考えられます。


小売業「安定性向上」の改善課題(例)

課題テーマ 回収と支払のバランス

課題のご提案
一般売掛は原則として発生させないが、仮に止むなく発生する場合には、回収条件を文書にて確認させ、契約しておく。

施策の事例
(1) 一般売掛にて販売する場合の社内規定を作ることについて検討する。
    (2) 一般売掛にて販売する時にお客様から作成していただく支払予定表の用紙を準備することを検討する。


課題のご提案
現在の顧客・取引先ごとに回収条件・支払条件を整理して、自社としての取引方針を明らかにする。

施策の事例
(1) 支払条件別に仕入先、平均仕入額等を整理し、望ましい形について検討する。
    (2) 売掛金の入金状況や経費の支払い状況を踏まえた上で仕入先への支払条件について再検討する。


課題のご提案
売掛債権の回転率と買掛債務の回転率を対比し、資金面での改善方針を明らかにして、その上で支払条件の基準を作る。

施策の事例
(1) 売掛金、買掛金の回転率が業界水準と較べて問題がないかについてチェックし、改善策の検討をする。
    (2) 支払いの条件設定は、資金面でのバランスと共に、仕入価格等がどうなるかについても折衝した上で決めることを検討する。



 決算書を分析・診断することにより、自分の会社の経営課題が明らかにされます。是非、顧問の会計事務所にご相談してみてください。

 次回は、「健全性の向上」を実現するための改善課題について説明します。





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