第14回 [資金性の向上]を実現するための改善課題は!!

 引き続き、6要素から自社の経営改善をするための課題について、説明をしていきます。
 今回は資金性です。


 人間は身体の隅々まで血液が行き渡って循環していれば健康を維持することができます。反対な場合には動脈硬化や心臓病など生命に関わる病気になる可能性もあります。同様に会社の血液である資金が充分に全体に流れているのを見るのが「資金性」です。ですから資金性は「流動性」と言い換えることもできます。
 会社の「流動性」(資金の流れ)を示す代表的な経営指標は「流動比率」で《流動資産÷流動負債》で求めます。流動負債は1年以内に支払わなければならない負債であり、流動資産は1年以内に現金にできる資産のことです。つまり、流動比率は、短期の負債と手形を返済するための財源を見る比率なのです。この比率が大きければ大きいほど会社の返済能力(余裕度)があることになります。
 しかし、〔資金性〕は、会社の支払能力を見るためだけの要素ではありません。
 会社経営では、投下した資本によって製造活動や販売活動が行われ、それが売上によって回収されます。
 そこで投下した資金がムダなく使われているか、その回収程度はどうかが、問題になります。資本投下の仕方にムダがあったり、売上による回収が滞ったりすると、資金の流れが悪くなり、資金繰りに詰まる可能性があります。
 そこでここでは、会社の資金がムダなく、効率よく、スムーズに回転しているかどうかを調べます。

 「資金性」を見るポイントは

(1) 投下資本の売上貢献度はどうか  (=総資本回転日数  で判定)
(2) 売上代金の回収のスピードはどうか  (=受取勘定回転日数  で判定)
(3) 棚卸資産(在庫)の足の早さはどうか  (=棚卸資産回転日数  で判定)
(4) 固定資産の売上貢献度はどうか  (=固定資産回転日数  で判定)
(5) 資金の回収と支払のバランスはどうか  (=受取勘定回転日数
   ÷支払勘定回転日数 で判定)
です。これらの判定結果によって「資金性の向上」を実現していくための改善課題で考えられるのは以下の通りです。


業種別(卸売業、小売業、サービス業、製造業、建設業、運輸業、飲食業) の
「資金性の向上」実現のための改善課題の表示(例)

卸売業 小売業 サービス業
与信(信用調査)の実施
取引条件の明確化
資金管理の改善
経費管理の徹底
資産効率の向上
情報管理の徹底
納期管理の徹底
商品回転日数の改善
完全回収の追求
顧客構造の改善
 
貸し倒れの未然防止
取引条件の明確化
資金繰り表の作成
情報管理の徹底
資産効率の向上
計画的な設備投資の実施
納期管理の徹底
IT化の推進
売上債権の回収強化
新しい販売方法の開拓
 
仕入・購買管理の充実
取引条件の改善
資金繰り表の作成
貸し倒れの未然防止
納期管理の徹底
売掛債権の回収強化
目標管理の実施
顧客指向の徹底
在庫管理の徹底
顧客情報の活用

製造業 建設業
与信(信用調査)の実施
取引条件の明確化
資金繰り表の作成
情報管理の徹底
資産効率の向上
計画的な設備投資の実施
納期管理の徹底
在庫管理基準の明確化
売上債権の回収強化
取引先構成の改善

 
与信(信用調査)の実施
完全回収の追求
資金管理の徹底
情報管理の徹底
資産効率の向上
計画的な設備投資の実施
仕入・購買管理の徹底
在庫管理基準の明確化
取引条件の改善
内部管理体制の充実

運輸業 飲食業
与信(信用調査)の実施
取引条件の明確化
資金繰り計画の立案
情報管理の徹底
設備の効率的活用
計画的な設備投資の実施
債権回収の強化
燃料・購買管理の徹底
配車の効率化
長期的資金計画の立案
 
新規客層の開拓
食材管理の強化
資金繰り表の作成
情報管理の徹底
資産効率の向上
計画的な設備投資の実施
売掛金の回収強化
在庫管理基準の明確化
原価率低減の強化
仕入先構成の見直し


 例えば、小売業の場合で、自社にとって資金性の判定からで、「IT化の推進」が課題であったとすると、以下のような検討項目が考えられます。


  小売業「資金性向上」の改善課題(例)

課題テーマ IT化の推進

課題のご提案
IT化を進め、月次の棚卸しや単品管理を効率的に行なう。

施策の事例
(1) IT化を進めるに先立ち、管理レベルの向上や、省力化等についての目的・目標を明確にすることについて検討する。
    (2) 設備だけIT化を進めても実際に使う人達が使いこなさなければ役に立ちません。現場のメンバーを導入検討チームに加えることを検討する。


課題のご提案
POSレジをはじめとして、店舗内におけるオペレーションシステム導入を総合的に調査し、段階的にその導入を図る。

施策の事例
(1) 現在のシステムによる商品管理、顧客管理に関するデータを最大限活用することをまず検討する。
    (2) 店舗オートメーションに関する展示会等を見学に行くことを検討する。


課題のご提案
顧客管理のためのパソコンを店頭に置くことで、どのような運用と効果が期待できるかについての検討を始める。

施策の事例
(1) 業界誌等で情報収集を始める。
    (2) POSレジのメーカーや仕入先等の紹介を得て、成功されている店に見学に行くことを検討する。



 決算書を分析・診断することにより、自分の会社の経営課題が明らかにされます。
 是非、顧問の会計事務所にご相談してみてください。

 次回は、「安定性の向上」を実現するための改善課題について説明します。





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