第13回 [生産性の向上]を実現するための改善課題は!!

 引き続き、6要素から自社の経営改善をするための課題について、説明をしていきます。
 今回は生産性です。


 企業の経営資源は「ヒト・モノ・カネ・技術・情報・時間」であるといいます。これらの経営資源をいかに効率よく投入して成果を上げることができるかが、経営にとっては大きな問題です。
 例えば、製造業の場合は、ヒト(人材)やモノ(原材料や設備など)を使い、時間をかけて技術を磨き製品をつくって販売することで効率よく販売できれば大きな利益を得ることができます。

 また、流通業の場合は、ヒト(人材)やモノ(店舗や営業車輌等)を使い、時間をかけて仕入れしたものを販売することで利益を上げます。当然、できるだけ安く仕入れて効率よく販売すれば、その分だけ利益を上げることができます。

 会社の経営資源であるヒトやモノ、あるいは時間を効率的に活かして大きな付加価値、高い利益を上げているかを見るのが生産性分析と判定です。

 「生産性」を見るポイントは

(1) 一人当たり正味稼ぎ高はどうか  (=一人当たり付加価値  で判定)
(2) 一人当たり本業活動成果はどうか  (=一人当たり営業利益  で判定)
(3) 一人当たり経営活動成果はどうか  (=一人当たり経常利益  で判定)
(4) 従業員の給与レベルはどうか  (=平均従業員給与  で判定)
(5) 固定資産の利益貢献度はどうか  (=固定資産投資効率  で判定)

です。これらの判定結果によって「生産性の向上」を実現していくための改善課題で考えられるのは以下の通りです。


業種別(卸売業、小売業、サービス業、製造業、建設業、運輸業、飲食業) の
「生産性の向上」実現のための改善課題の表示(例)

卸売業 小売業 サービス業
付加価値の向上
改善活動の実践
商品構成の見直し
人員配置の適正化
コスト管理の徹底
顧客指向の徹底
販売チャネルの見直し
給与・報奨制度の見直し
ニーズ変化への対応
店舗の活性化
 
高付加価値販売の実現
改善活動の実践
商品構成の見直し
仕入・購買管理の徹底
人員配置の見直し
原価管理の徹底
販売員の育成強化
ムダ・ロスの排除
販売方法の見直し
給与・報奨制度の見直し
 
付加価値の向上
改善活動の実践
商品・サービスの見直し
新しいアイディアの付加
顧客管理の徹底
品質管理の徹底
オリジナリティを持つ
クレーム対応力の強化
時間管理の徹底
経費管理の徹底

製造業 建設業
設計・設備・作業の改善
顧客管理の徹底
品質管理の徹底
仕入・購買管理の徹底
工程管理の徹底
原価管理の徹底
技術系社員の育成強化
ムダ・ロスの排除
安全管理の徹底
給与・報奨制度の見直し

 
営業方法の工夫
クレーム工事の絶滅
顧客管理の徹底
資機材管理の徹底
工程管理の徹底
安全管理の徹底
品質管理の徹底
工期納期管理の徹底
外部の人材・技術の活用
アフター点検制度の導入

運輸業 飲食業
運行効率の向上
乗務員の育成強化
人材の活性化
改善活動の実践
車輌管理の徹底
荷主管理の徹底
ムダ・ロスの排除
荷主満足度の向上
運行三費の管理強化
給与・報奨制度の見直し
 
計画的な販促の実施
改善活動の実践
メニュー構成の見直し
顧客管理の徹底
人員配置の見直し
原価管理の徹底
時間の効率的活用
ムダ・ロスの排除
衛生管理の徹底
給与・報奨制度の見直し


 例えば、小売業の場合で、自社にとって生産性の判定からで、「ムダ・ロスの排除」が課題であったとすると、以下のような検討項目が考えられます。


  小売業「生産性向上」の改善課題(例)

課題テーマ ムダ・ロスの排除

課題のご提案
定期的に帳簿と実際在庫との差異分析の他長期在庫品の明確化と対処策の立案実施を行うことで、商品面でのロスを減らす。

施策の事例
(1) 少なくとも3ヶ月に1回は実施棚卸を行ない、帳簿との対比により、ロス、粗利益率を確認することを検討する。
    (2) 定期的に長滞品のリストアップと対処方法を取り決めることを検討する。


課題のご提案
顧客の入りが少ない時間帯における社員の仕事内容の見直しを図り、効率的な人員シフトを組む。

施策の事例
(1) 時間的制約のない内部の仕事は、来客数基準により作成したシフト表の中で余裕のある時間帯にさせるようにすることを検討する。
    (2) パート等でも業務の範囲を限定せずに、時間帯によりパートだけでも運用できるようにすることで効率化を図ることを検討する。


課題のご提案
店頭における伝票処理などを中途半端のままで事務所に回すことで、重複業務が発生する。後工程を考えた責任体制を作る。

施策の事例
(1) 販売員に対しても必要な事務処理の進め方についての研修を実施することを検討する。
    (2) 販売員であっても、事務処理等が責任をもって正しく処理されているかどうかも、賞与等の評価項目にすることを検討する。



 決算書を分析・診断することにより、自分の会社の経営課題が明らかにされます。
 是非、顧問の会計事務所にご相談してみてください。

 次回は、「資金性の向上」を実現するための改善課題について説明します。





Produced By
「決算診断」プロス
株式会社プロス