第102回 独自の技術で会社個性を守る

 群馬県太田市は自動車メーカーの富士重工業の城下町です。富士重工業は世界企業のトヨタと連携をしている企業です。富士重工業の業績が輸出企業にとってはアゲインストになる円高にもかかわらず絶好調をキープしています。多くの自動車メーカーは世界販売を目指し海外生産にシフトをしている中で、全売上の国内生産の比率は70%と、マツダと並んで高い数字を示しています。

 それでも、主力車「レガシィ」や「インプレッサ」などの売れ行きが国内、米国、中国で好調で、太田市にある工場ではフル操業の状態が続いています。

 多くの下請企業には独自の技術を持った創業以来の信頼関係があります。よき関係性を保ち、この10年間、海外に生産拠点を移さなかったのです。トヨタとの連携によって「手本」や「学ぶこと」があったようです。

 好調が続くのは『差異化』と『絞込み』の結果だといいます。足して2で割る開発は絶対にしない。例を上げれば、衝突防止装置『アイサイト』です。″ぶつからない車″など、だれも手掛けていないコンセプトを織り込んで他社と比べようがないようにする。すると価格競争にも巻き込まれることもないのです。『レガシィ』が最も売れている米国ではインセンティブ(販売奨励金=値引き)が800ドル程度と業界平均の3分の1だそうです。車の性能・品質がよくなれば、マーケティングにも好影響が生まれてくるのです。

 富士重工業のブランドである″スバル″の個性は技術思考にあります。富士重工業はやはり技術屋集団ですので、以前は技術屋の好きな車だけをつくっていた時代がありましたが、今は消費者の声や不満をひたすら聞きつつ、技術思考を失わないようにしているとのことです。″スバル″が″スバル″でなくなったら魅力を失い、国内最小の自動車メーカーとして個性が埋没してしまうという危機感をもっています。また、富士重工業では以前は軽自動車の生産も行っていましたが、あれもこれもでは生き残ることができないとの考えから軽自動車の開発要員を主力車の『レガシィ』『インプレッサ』に振りむけたからこそ、『インプレッサ』のモデル周期が7年だったのを新型では4年に短縮することができたのです。富士重工業ではフルラインアップの品揃えはできないが、自分達の強みを問い続けた結果、『安心と楽しさ』という考えにたどり着いたのです。世界の自動車販売台数は新興国を中心に成長を続けています。でも、これからは車のコモディティー(汎用品)化も起こってきます。車の種類も移動手段だけの車と移動を楽しむ車の2種類があり、″スバル″は後者に入ります。

 趣味や嗜好品的な車こそが富士重工業の目指す市場であり、あってよかった商品をつくり続けていく決意だそうです。

 多くの中小企業にとって、この富士重工業の独自の技術で会社個性を守るという考えは、これからの経営の舵取りをしていく上で参考になると思います。

 自分の会社の技術は何か、個性は何かを、会社の強み・弱みが分かる「決算診断」と社長の経営の個性がつかめる「マネージメントパワー」によって明確にして、これから先の未来を築いていってください。


 自社の強み弱みを自分なりに分析すると共に、数字=決算を分析することによって、どこを、どのように伸ばしていけばよいのかの裏付けとなります。数字は嘘をつきません。ただ、それをどのように見るかによって、生きた決算となるか、数字の羅列だけに終わるか、180度違ったものとなってしまいます。定期的に自社の決算を分析・評価・診断することにより、経営の傾向を読み取り、これからの自社の展望を切り開くことに役立てて下さい。


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