中小企業の会計に関する指針
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 外貨建取引等


 要 点
外貨建取引は、原則として、当該取引発生時の為替相場による円換算額をもって記録する。
外国通貨については、決算時の為替相場による円換算額を付す。
外貨建金銭債権債務(外貨預金を含む。)については、決算時の為替相場による円換算額を付す。
外貨建売買目的有価証券、その他有価証券(時価のないものを含む。)及び評価損を計上した有価証券については、時価(その他有価証券のうち時価のないものについては取得原価)を決算時の為替相場により円換算した額を付す。


75.取引発生時の処理

 外貨建取引は、原則として、当該取引発生時の為替相場による円換算額をもって記録する。


76.決算時の処理

 外国通貨、外貨建金銭債権債務等の金融商品については、決算時において、原則として、次の処理を行う。

(1)  外国通貨については、決算時の為替相場による円換算額を付す。

(2)  外貨建金銭債権債務(外貨預金を含む。)については、決算時の為替相場による円換算額を付す。ただし、長期のもの(1年超のもの)について重要性がない場合には、取得時の為替相場による円換算額を付すことができる。

(3)  満期保有目的の外貨建債券については、外国通貨による取得原価又は償却原価法に基づく価格を決算時の為替相場により円換算した額を付す。

(4)  外貨建売買目的有価証券及びその他有価証券については、外国通貨による時価(その他有価証券のうち時価のないものについては取得原価)を決算時の為替相場により円換算した額を付す。

(5)  子会社株式及び関連会社株式については、取得時の為替相場による円換算額を付す。

(6)  外貨建有価証券について時価の著しい下落又は実質価額の著しい低下により評価額の引下げが求められる場合には、当該外貨建有価証券の時価又は実質価額は、外国通貨による時価又は実質価額を決算時の為替相場により円換算した額による。


77.換算差額の処理

 換算差額及び決済差損益は、原則として、営業外損益の部において当期の為替差損益として処理する。ただし、有価証券を時価で計上した場合の評価差額に含まれる換算差額は、当該評価差額に関する処理方法に従う。


78.ヘッジ会計

 外貨建取引に係る外貨建金銭債権債務と為替予約等との関係がヘッジ会計の要件を充たしている場合には、当該外貨建取引についてヘッジ会計を適用することができる。ただし、為替予約等により確定する決済時における円貨額により金銭債権債務等を換算し直物相場との差額を期間配分する方法(振当処理)によることもできる。


79.会計処理と法人税法上の取扱い

 会計処理が特殊な項目を除き決算時の為替相場により換算するのに対して、法人税法は外貨建資産等の期末換算に関して、下記表19の通り、外貨建資産等を一年基準により短期と長期とに分類した上で、期末換算の方法を規定している。
 しかし、外貨建その他有価証券を除き、換算方法等を税務署長に届け出ることにより、本指針の会計処理と法人税法上の取扱いを一致させることができる。

外貨建資産等の区分 会計上の換算方法 法人税法上の換算方法
外国通貨 決算時の為替相場により換算 期末時換算法



短期外貨預金 期末時換算法(法定換算方法)又は発生時換算法
上記以外のもの 期末時換算法又は発生時換算法(法定換算方法)






短期外貨建債権債務 決算時の為替相場により換算(ただし、旧商法による転換社債については、発行時の為替相場) 期末時換算法(法定換算方法)又は発生時換算法
上記以外のもの 発生時換算法(法定換算方法)又は期末時換算法






売買目的有価証券 期末時価を決算時の為替相場により換算 期末時換算法








償還期限及び償還
金額のあるもの
(満期保有目的)
取得原価又は償却原価を決算時の為替相場により換算 発生時換算法(法定換算方法)又は期末時換算法
償還期限及び償還
金額のあるもの
(満期保有目的外)
  17
期末時価を決算時の為替相場により換算(原則:換算差額は純資産の部に計上、例外:換算差額は当期の損益)
償還期限及び償還
金額のないもの
(株式)18
期末時価を決算時の為替相場により換算(換算差額は純資産の部に計上) 発生時換算法
子会社株式及び
関連会社株式
取得原価を取得時の為替相場により換算
  17  会計上は「その他有価証券」である。
  18  同上。
  19  外貨建債権、外貨建債務、外貨建有価証券、発生時換算法及び期末時換算法とは、原則として、法人税法第61条の9《外貨建資産等の期末換算差益又は期末換算差損の益金又は損金算入等》第1項に定めるものをいう。また、保有期間等が1年超であるか否かについては、期末時点で判定する。


【関連項目】
外貨建取引等会計処理基準(企業会計審議会) 一
金融商品に関する会計基準(企業会計基準第10号) 第29項〜第34項
外貨建取引等の会計処理に関する実務指針(会計制度委員会報告第4号)
金融商品会計に関する実務指針(会計制度委員会報告第14号)
法人税法第61条の6〜第61条の9
法人税法施行令第122条第1項


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