中小企業の会計に関する指針
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【各 論】

金銭債権


 要 点
金銭債権とは、金銭の給付を目的とする債権をいい、これには、預金、受取手形、売掛金、貸付金等が含まれる。
金銭債権には、その取得価額を付す。
金銭債権の取得価額が債権金額と異なる場合は、取得価額と債権金額との差額の性格が金利の調整と認められるときは、償却原価法に基づいて算定された価額とする。
デリバティブ取引がある場合、その正味の債権は、時価を貸借対照表価額とし、評価差額は、当期の損益として処理する。


10.金銭債権の定義

 金銭債権とは、金銭の給付を目的とする債権をいい、これには、預金、受取手形、売掛金、貸付金等が含まれる。


11.貸借対照表価額

 金銭債権には、その取得価額を付す。
 なお、金銭債権について取立不能のおそれがある場合には、金銭債権の属する科目ごとに、取立不能見込額を控除する形式で計上しなければならない。


12.取得価額と債権金額とが異なる場合の処理

 債権の支払日までの金利を反映して債権金額と異なる価額で債権を取得したときは、償却原価法に基づいて算定された価額をもって貸借対照表価額とする。償却原価法とは、金融資産を債権額と異なる金額で計上した場合において、当該差額に相当する金額を弁済期に至るまで毎期一定の方法で取得価額に加減する方法をいう。ただし、取得価額と債権金額との差額に重要性が乏しい場合には、決済時点において差額を損益として認識することもできる。


13.時価評価

 市場価格のある金銭債権については、時価又は適正な価格をもって貸借対照表価額とし、評価差額は、当期の損益として処理することができる。


14.金銭債権の譲渡

 手形の割引又は裏書及び金融機関等による金銭債権の買取りは、金銭債権の譲渡に該当する。したがって、手形割引時に、手形譲渡損が計上される。


15.貸借対照表上の表示

(1) 営業上の債権
 受取手形(通常の取引(当該会社の事業目的のための営業活動において、経常的に又は短期間に循環して発生する取引をいう。)に基づいて発生した手形債権)及び売掛金(通常の取引に基づいて発生した事業上の未収金)は、流動資産の部に表示する。ただし、これらの金銭債権のうち破産債権、再生債権、更生債権その他これらに準ずる債権で事業年度の末日の翌日から起算して1年以内に弁済を受けることができないことが明らかなものは、投資その他の資産の部に表示する。

(2) 営業上の債権以外の債権
 (1)以外の債権であって、事業年度の末日の翌日から起算して1年以内に現金化できると認められるものは、流動資産の部に表示し、それ以外のものは、投資その他の資産の部に表示する。

(3) 関係会社3に対する金銭債権
 関係会社に対する金銭債権は、次のいずれかの方法により表示する。
  (a)その金銭債権が属する項目ごとに、他の金銭債権と区分して表示する。
  (b)その金銭債権が属する項目ごとに、又は2以上の項目について一括して、注記する。

(4) 受取手形割引額等
  受取手形割引額及び受取手形譲渡額は、注記を要求されない場合においても、それぞれ注記することが望ましい。

   3  関係会社とは、当該株式会社の親会社、子会社及び関連会社並びに当該株式会社が他の会社等の関連会社である場合における当該他の会社等をいう(会社計算規則第2条第3項第22号)。また、関連会社とは、会社が他の会社等の財務及び事業の方針の決定に対して重要な影響を与えることができる場合における当該他の会社等(子会社を除く。)をいう(同第2条第3項第18号)。


16.デリバティブ

 デリバティブ取引により生じる正味の債権及び債務は、時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額は、当期の損益として処理する。ただし、ヘッジ目的でデリバティブ取引を行った場合、ヘッジ対象資産に譲渡等の事実がなく、かつ、そのデリバティブ取引がヘッジ対象資産に係る損失発生のヘッジに有効である限り、損益の繰延べが認められる。


【関連項目】
会社計算規則第2条第3項第18号及び第22号、第5条、第53条、第74条、第103条第6号
金融商品に関する会計基準(企業会計基準第10号) 第14項、(注5)、第25項及び第29項〜第34項
法人税法第61条の5、第61条の6


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