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ニッチ&成長市場で下請けを脱し、南アルプスの麓に凛と立つ

(17/04/06)

 「大手が捨てたものを拾う。数が少なくてやりづらいものばかりだが…」。ブレーキなどを製造販売する協和精工(長野県高森町)の堀政則社長は、実践中の経営戦略をそう説明する。一方で、「商品、分野には“旬”がある。5年後、10年後の旬は何だ、と常に問いかけている」と“次の一手”に腐心する。換言すれば、ニッチ市場と成長市場。二つを見定める堀社長の眼力と、オリジナル3K活動に代表される社内改革の取り組みが、信州・伊那谷の景勝地に、味わい深いモノづくり企業を形成した。

 50年ほど前の昭和41年(1966年)に発足した同社は、機械部品・冶工具づくりからスタートし、自動制御機器、電磁マイクロクラッチ、マイクロブレーキなど順次、手がけていく。平成12年(2000年)、前社長の急逝に伴い堀氏が3代目社長に就く。3代目といっても、創業者一族とは血縁関係がないサラリーマン社長。堀社長は、縁あって知り合った同社創業者に誘われ入社した元大手メーカー技術者で、急遽のバトンタッチとなった。

 バトンを引き継ぐと、多額の借入金を抱え、決して芳しくない経営の内実を思い知らされる。さらに、主要発注元がクラッチ・ブレーキ部門から撤退したため、売り上げの半分が消滅する危機に直面する。ピンチをどう乗り越えるか。堀社長は、それまでの下請け主体の業務形態に見切りをつけ、自立したブレーキメーカーへと経営の舵を切る。自立のための第一条として定めたのが、大手が捨てたものを拾う“ニッチ狙い”。併せて「開発期間を劇的に短くする」「カタログ商品は持たずに、すべてオーダーメイドにする」「商品ではなくプロセスを売る」−といった大方針も打ち出して有言実行。それらが奏功し、経営は軌道に乗る。

 ブレーキに次ぐ5年、10年先の柱づくりを目指し、防災、医療関連など新分野にも進出した。そこにも「大手が捨てたものを拾う」戦略が用いられる。例えば防災グッズは難易度が高い、売上金額は低い、連続発注性に乏しいといったことから、大手企業にはうま味が少ない。しかし「わたしたち中小企業からすると付加価値は高い」(堀社長)というわけで、堀社長は専門の設計者を採用するなど、拡大発展に向けた布石を着々と打ってきている。

 同社では、きつい、汚い、危険の3Kをもじった、独自の3K活動も推進中。「3倍きれいにし、3倍の効率で、3倍の効果を出す」を意味する、一般的な3Kとは正反対の3Kである。また、日々の収支をグラフで示す見える化や、月次の業績を全社員に知らせる情報共有を徹底し,障がい者雇用にも力を入れている。これらの取り組みが評価され、グッドカンパニー大賞(中小企業研究センター)やダイバーシティ経営企業100選(経済産業省)の栄誉にも輝いた。南アルプスの麓(ふもと)に『気が利くモノづくりの技術集団』(同社ホームページより)が凛(りん)と構えている。

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