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世界最先端のパノラマ技術で、VR最前線を活性化

(17/03/09)

 「バーチャル・リアリティ(VR=仮想現実)が何に使えるか、よく分からない“妄想”の段階から、具体事例がたくさん出てくる実用化の段階に移った」−カディンチェ(東京)の青木崇行社長はVR最前線をそう説明する。同社は、VRを駆使した、重機の遠隔操縦システム、鉄道事業者向け安全教育ソリューションなどを次々と生み出し、具体事例輩出の一翼を担っている。「一つの実績が次につながり、横展開も効く」(青木社長)と好循環期に入った同社をヘッドマウントディスプレイ(HMD)越しに眺めると、輝きが増すばかりの近未来の姿・形がくっきり浮かび上がる。

 同社は大手電機メーカーに勤め、画像信号処理周りの研究開発に携わっていた青木社長と同僚の二人が研究所の閉鎖をきっかけに2008年に設立した。その当時、仮想空間を舞台にしたオンラインゲーム『セカンドライフ』がブームとなっていた。青木社長は「セカンドライフの実写版のようなものを目指した」と創業時を振り返る。「立ち上げから3年は苦労の連続だった」(青木社長)が、4年目辺りから徐々に仕事が増え軌道に乗り今日に至る。

 同社の一番の強みは360度パノラマ映像処理の技術・ノウハウで「世界でも最先端にあると自負している」(同)。自慢の技術・ノウハウを駆使して、遠隔地から実際に搭乗している感覚で重機を操縦できる臨場型映像システム、製薬の現場をVR体験できるバーチャル工場、精巧な時計の内部構造を表す3次元時計シミュレーターなどを相次ぎ作製。NHKのテレビ放送やホームページのコンテンツ制作でも多くの実績を収めている。

 ここへきての第2次VRブームが同社の成長発展を後押しする。高機能で安価なHMDが開発されるなど、VRの普及を加速させるアイテムが数多く登場し、そうしたうねりが同社の事業機会を急拡大させている格好だ。VRはスポーツと相性がいいことでも知られている。そのため青木社長は「2020年の東京オリンピックは先端のVR技術を世界にアピールする絶好のチャンス。良い提案をして、チャンスを生かしたい」と、五輪プロジェクトへの参画にも意欲を示す。

 青木社長は学生時代からネパールやバングデシュを訪れ、教育、環境、災害対策などの支援活動を続けており、「発展途上国×技術にすごく興味があり、インターネットを使った遠隔医療をネパールでいつか実現させたい」と目を輝かす。社名のカディンチェとは、ゾンカ語(ブータン王国の言語)で「ありがとう」の意味。感謝の気持ちをベースに、他とは少し違ったこと、変わったことに挑戦しようと名付けたという。起業から9年。狙い通りの、他社とは一味違うベンチャーに育ち上がり、その存在感は日増しに高まるばかりだ。

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