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産業用ロボットに目と脳を付ける立命館大発ベンチャー

(17/03/02)

 「腕しか持たない産業用ロボットに目と脳を付ける。それが私たちの仕事です」。三次元メディア(滋賀県草津市)の徐剛社長は、自社の立ち位置を分かりやすく説明する。会社設立から16年。「大学の先生だけでは面白くない」と、教授と社長業の二足のわらじを履いた徐さんのリーダーシップのもと、同社はロボット関連の有力ベンチャーに成長発展した。進化をし続けるロボットの中枢機能を担う同社製品への期待は高まるばかりだ。

 立命館大学発ベンチャーとして知られる同社は2000年に、当時、立命館大学助教授だった徐氏(現教授)が設立した。ベースには「工学研究は最終的に社会に価値を提供し、生活を豊かにすることが目的」との考えがあり、起業による、自身の研究成果の実用化を目指した。当初は計測・モデリングソフトやCADデータ入力システムなどを手がけたが、次第にロボット関連にシフトしていき、2011年に世界初の本格的3次元ロボットビジョンセンサーを製品化。以後、ロボットベンチャーとして実績を積み重ねて今日に至る。

 主力の3次元センサーは、産業用ロボットの目となり脳となって、とくに、モノをつかむピッキングで威力を発揮する。対象物にごみやホコリが付いていても、また光沢があってもクリアに識別できて、的確なピッキング作業が行える。コア技術となるのが、徐社長が開発した、認識・位置決め・制御の「6次元空間における探索問題としての定式化」というもの。3次元モデルを6次元空間で探索する手法とも言い換えられるようで、いずれにしろ、6次元がキーワードとなる。

 一つの物体を認識することは、XYZの3次元プラス姿勢を表すαβγの合計6次元空間における1点を探すことと等しい−これが定式化&探索手法の要諦で、その発展形でさまざまな特許を取得して、研究開発成果を実用に供している。徐社長は「技術だけでなく、顧客をはじめとする周囲との関係構築など、企業の総合力が強みとなってきている」と胸を張る。もっとも「技術を製品にするハードルは乗り越えた。次は製品を事業として成功させるハードルへの挑戦になる」と、経営者目線で自社の昨日、今日、明日を分析する。

 今春、徐社長は二足のわらじの片一方を脱ぎ捨てて社長業に専念する。立命館大が徐教授のために設けた休職制度を活用するもので、大学が三次元メディアに寄せる期待の大きさが伺える。徐社長は「ムーアの法則のおかげで、ロボットの時代が到来した。われわれの技術で産業ロボットの知能化を推進し、工場の作業すべてをロボットが担うなど、ものづくりのあり方を変えていきたい」と時代の大きなうねりを自ら創り出そうとしている。

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