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元商社マンの2代目社長が中小製造業の新モデルを構築

(17/02/23)

 「潤滑剤」という何の変哲もないジャンルで、一大ヒット商品を生み出したのがスズキ機工(千葉県松戸市、鈴木豊社長)だ。その名も「奇跡の潤滑剤ベルハンマー」。食品工場などの現場ニーズを汲み上げて開発したベルハンマーは、鈴木社長の血と汗ならぬ“知恵と汗の結晶”となる。自称、「職人と商人の血が混ざっている」という元商社マンの2代目社長は、あふれるアイデアを次々と形にし、中小製造業の新モデルを構築した。

 同社は鈴木社長の父親が1976年に設立した。一斗缶(18リットル缶)などをつくる製缶機械のメンテナンスからスタートして機械製造に乗り出すも、得意先の製缶会社がバブル崩壊のあおりで倒産し窮地に立つ。そんな折、商社で食品輸入に携わっていた鈴木社長が、父に乞われ入社。斜陽の製缶に見切りをつけ、商社時代の人脈を生かした食品機械づくりへとシフトして経営を立て直す。大手食品メーカーとの取引も増えていったが、食品機械は「一品料理」でメンテに手間暇がかかるなどから利幅の薄い自転車操業の状態が続く。そのため、取引先を車で1時間以内の企業に絞るなど、あの手この手を打ち出していく。

 あの手この手の一つが潤滑剤の製品化。数多くの顧客企業の工場に入り込んで、現場ニーズを熟知した同社ならではのチャレンジで、金属表面に被膜を形成し摩擦・磨耗の抑止に大きな効果を生む潤滑剤の開発に成功した。この「奇跡のベルハンマー」を展示会に出展し試験装置による比較性能を実演したところ黒山の人だかりとなり、テレビスタッフの目にも留まる。全国ネット番組の、その名も「展示会で発見!未来の儲かる原石」で紹介されたら「注文が殺到。すぐに在庫がなくなって2カ月間、クレームが続いた」(鈴木社長)。

 今では看板商品のベルハンマーのほか、奇跡の粉かけ装置、奇跡の電線収納ラック、奇跡の振動ふるい、奇跡の掃除機ノズル、奇跡の切れ味「ベルシザー(工業用はさみ)」など、たくさんの奇跡シリーズ製品を品揃え。そのほとんどが鈴木社長のアイデアという。経済学部卒の元商社マンは、家業を継ぐことを決めてから設計、機械加工、電気制御を必要に迫られ独学で身に付けた。そんな社長の知恵と汗が“儲かる原石”を次々と世に輩出した格好だ。

 奇跡シリーズ製品は、国内各地はもちろん、海外での販売実績も積み上げている。世界に販売する製品群と、車で1時間エリアの食品工場向け一品料理。この組み合わせの妙が、同社の強み、持ち味となっている。鈴木社長は「福祉のチカラ∞商売のチカラ」のうたい文句のもと、ビジネスを通して障害者を支援する「マツボックリ君3兄弟プロジェクト」の活動にも力を入れている。「職人の血」と「商人の知」がうまくミックスし、自然体で八面六臂に活躍できる強靭な筋肉が、鈴木社長にもスズキ機工にもしっかり付いたようだ。

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