e中小企業コラム
「e中小企業コラム」一覧へ

工場直結のアパレルベンチャーが日本ブランドを世界へ

(17/02/09)

 生鮮品の産直(産地直送)ならぬ“服の産直”をインターネット上で手がけ、実績を積み上げているのが、ライフスタイルアクセント(熊本市、山田敏夫社長)だ。全国各地の40余りのアパレル工場と提携し、ベテラン職人の匠の技で仕立てたシャツやコート、ジーンズなどをネットショップ「ファクトリエ」で消費者に直販している。流通を通さない工場直結モデルを確立し、各商品を通常の市場価格の半額以下の価格帯で提供。インターネットの本質とされる“中抜き”を実践し、その先には世界ブランドへの昇華も目指している。

 同社は2012年に山田社長が一人で立ち上げた。山田社長は熊本の老舗婦人服店に生まれ、学生時代にはフランス留学してパリのブランド店で働き「ブランドというものの認識を改めさせられた」(山田社長)経験を持つ。大学卒業後、ネット系ベンチャーやファッション流通会社で働いたのち、アパレル業界の変革とメイドインジャパン・ブランドの復活を目指して、29歳で独立・起業した。

 「日本の繊維産業は衰退の一途をたどっていたため、起業時、周りからは、スマホ時代にガラケーをつくるようなものだと、さんざん反対された。当初は無収入で、週末にアルバイトをして生活費を稼いだ」(同)。苦労を重ねても、毎日、休むことなく全国の工場を歩き回り、その数は500に達した。業界変革への衰えぬ情熱と、著名人や業界キーパーソンと直接会ってシンパを増やす戦略が功を奏し、取引・販売実績は徐々に膨らんでいく。

 同社のビジネスモデルは、工場直結のネット販売により、百貨店、専門店などの取扱品と同等品質のアパレル品を半額以下で提供するというもの。国内アパレル工場は、一般に、高い縫製技術を誇っていても、デザイン力や販売ノウハウは乏しい。そこで、乏しい部分を同社が補うウィンウィンの関係構築を目指した。デザインに関しては業界を代表する面々の協力が得られように設計。その結果、「ここへきて売り上げは急カーブで伸びている。何よりうれしいのが、売り上げの半分は工場に渡っていること」と山田社長は顔をほころばす。

 ネットショップの店名である「ファクトリエ」はブランド名でもあり、各製品には「Factelier(ファクトリエ)by◎◎」と、◎◎部分に工場名を大きくあしらっている。このブランドを世界に浸透させるのが、山田社長が掲げる目標の一つ。今、ネット検索で「メイドインジャパン」と「ファッション」を入力するとトップに出てくるのが「ファクトリエ」。すでに世界ブランド化へ向け、力強く飛翔した感がある。さらに「東京五輪の日本選手団のユニフォームを我々の手でつくりたい。そうなれば、全国各地の工場がどれだけ元気づくことか…」と、2020年の“アパレル業界の金メダル”も目指している。

〔当サイトのコンテンツは中小企業庁・中小企業基盤整備機構の許可を得て掲載しています。〕
Copyright(c) Organization for Small and Medium Enterprises and Regional Innovation, Japan All rights reserved.
Copyright 著作権マーク SEIKO EPSON CORPORATION , All rights reserved.