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微細気泡による農業変革に『大学生社長』が挑戦

(17/01/26)

 「高林君は日本農業界を変える希望だ」。このひと言に背中を押され、幸陽農舎(埼玉県草加市)を興したのが大学生社長の高林稜さん。高林さんは勉学に励む傍らで、実家の土木会社の営業に携わり、農家の人たちと接点が多かった。その縁で知り合った、今は亡き“農業師匠”が発したのが冒頭のフレーズ。師匠の期待に応えるべく、マイクロバブルシステム「大豊作ジェット」を引っ提げ、農業変革への長い道のりの第一歩を踏み出した。

 同社は昨年、慶応大学商学部4年の高林さんが設立したばかり。高林さんは家業の手伝いを通し、耕作放棄地を持て余す地主が少なくないことを知って、余った農地の活用方法などに知恵を絞るが、何にしろ、農業のイロハを知らなければアイデアも浮かばないと、農家の人たちから、種の蒔き方からトラクターの乗り方まで懸命に学ぶ。そんな中、最初の農業師匠ががんで亡くなってしまう。師匠は生前、家族に対し、懸命に勉強する高林さんを「希望の星だ」と話していたと聞かされる。高林さんは、がんの治療を隠し畑に出てきた亡き師匠に思いを馳せ「よし、オレが日本の農業衰退を止めてやる」と決意する。

 師匠の言葉のほか、もう一つ、蘭農家での発見も起業の大きな動機となった。農業の勉強の一環として地元で有名な蘭の農家を訪問した時、マイクロバブル(微細な気泡)の発生装置が、蘭の花を大きく健康に育てるうえで重要な役割を担っていると知る。ただ、その装置は400万円と高価。良質なマイクロバブルを発生できる廉価な装置を提供できれば、農家に広く普及し、儲かる農業に直結するはず−頭をよぎったその思いも幸陽農舎誕生の原点となる。

 「穴の大きさ、角度やソケットパーツ、シャワーヘッドなどの組み合わせを300回以上、試みた」(高林社長)。このトライ&エラーが最適解となる「大豊作ジェット」に結びつく。高林社長は「マイクロバブル効果で、野菜の大きさ・重さが20%アップし、肥料や農薬を大幅に削減できる」と効用を説く。遠くまで気泡を運べる、オーダーメイドで各農家のニーズにきめ細かく対応できるといった特徴と、何より、従来製品より1けた・2けた安い価格破壊のレンタル販売が受け入れられ、導入実績は急カーブで積み上がっている。

 高林社長は「周りが大企業の内定を決めていく中、畑の真ん中で自分の行く先について悩んでいた」と振り返る。師匠のひと言とマイクロバブルとの出会い。この二つが悩みを吹っ切らせて、今春の大学卒業と同時にベンチャー経営に専念する。「最終目標は日本の農業を変えること。強い農業、儲かる農業をつくるため、農家と新規就農者、消費者の三者をターゲットに事業を進めていく」と、骨太の青写真をくっきりと描いている。

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