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空飛ぶドローンを地下に潜らせ、世に役立てる

(16/12/01)

 「ドローン(無人航空機)の産業利用はこれからが本番。世界中がしのぎを削っている状況で、日本の注目度は高い」。ブルーイノベーション(東京)の熊田貴之社長は、ドローンビジネス最前線をそう説明する。注目度の高い日本の中でも、ひと際、大きな存在感を示す同社が今、力を入れるのがドローンによる下水管の点検作業。「実証実験の成果を踏まえ再来年には実用化する」(熊田社長)と、空飛ぶドローンを地下に潜らせ、世に役立てる。

 同社は1999年に熊田現社長の父親である熊田知之氏(現相談役)が設立した。その後、大学院で海岸侵食を研究し、精緻な海浜変形予測モデルを作成した熊田現社長が同社に参画。研究で身に付けた知識や技術を現場に生かす「海岸事業」を立ち上げる。「健康診断のレントゲン検査のように、海岸線の定期的な空撮が欠かせない」(熊田社長)といったことから、空撮の実績を積み重ねていく。東日本大震災の復旧関連事業でも大活躍。一連の取り組みを通して、おのずからドローンとの関わりが深まっていき、ドローンブームが巻き起こった今、ドローン業界のキープレーヤーの位置を占めるまでになっている。

 現在、同社では複数のドローンプロジェクトを並行して進めている。その中で、特に注目されるのが、ドローンによる下水管の点検だ。全国の下水管は老朽化が進み、老朽化に伴う道路陥没が各地で頻発している。点検の重要性は増すばかりだが、現行の作業員による目視や、カメラ搭載の小型無人車による点検作業は、作業効率や安全面の課題、難点が少なくない。それらを解消し、現行の約10倍の作業効率を目指すのがドローン点検で、今秋から横浜市で実証実験を推進中。GPS(全地球測位システム)を受信できない下水管での自動飛行がうまくいけば、ドローンの活用領域がぐっと広がることにもなる。

 ドロースクールによるパイロットの育成、飛行計画から申請までの事前作業を省力化する地図サービスの提供、搭載するフライトレコーダーの標準化と事故解析への活用、ドローン飛行場の整備…。同社が手がけるプロジェクトの多くはインフラ関連の取り組みで、どれもが産学官の約1000会員からなるドローン推進団体JUIDA(事務局長は熊田相談役)と共同歩調を取っている。「多くのの産業と連携しPDCAを回していく」(熊田社長)と、まずインフラを整え、その上で、ドローンビジネスを大きく開花させる考えだ。

 JUIDAでは、ドローン先進国の中国をはじめとするアジア各国のドローン団体との間で、MOU(了解覚書)を取り交わし、ドローンの普及発展に向け足並みをそろえるといった動きも見せている。「ITなどと比べてドローンはアジアに向いている」と話す熊田社長の口の端には、アジア発・産業用ドローンで、世界の市場を席巻し、その一翼を担おうとの意欲がにじんでいる。

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