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創薬ベンチャーが『免疫つながり』でワクチンとマコモを開発

(16/11/17)

 「『終わりのないやっかいな恋愛ですよ。ワクチン開発は』と言われたことを思い出す…」。文学的な言い回しでワクチン開発の難しさを語るのは、バイオコモ(三重県菰野町)社長の福村正之さんだ。同社は、そのやっかいな恋愛を成就すべく、8年前に発足した創薬ベンチャー。本業のワクチン開発の一方で、ここへきて地元に生育するイネ科植物「マコモ」を原料とする新たな付加価値商品づくりにも乗り出した。ワクチンとマコモの“二股作戦”で、所期の成果と予期せぬ果実の両方を手にしようとしている。

 同社は千葉県がんセンターやバイオ企業で、遺伝子治療に関する研究開発に取り組んだ福村氏が平成20年に設立した。感染症に有効な新ワクチンの開発を目標に、福村氏の母校、三重大学の医学部などと共同研究を進めてきている。ベクターと呼ばれる“遺伝子の運び屋”に関する研究成果が同社の中核技術となる。ベクターの活用などによって「生ワクチンの高い免疫機能を保持しつつ、生ワクチンのデメリットである感染症発症リスクを取り除く」(福村社長)という“いいとこ取り”のワクチン開発を目指している。

 最近の取り組みについて、福村社長は「開発の対象はエボラウイルス、RSウイルス、マラリア原虫、さらに小頭症の原因となるジカウイルスなどに対するワクチン。そのうち、前2者は素早い事業化を目指している」と説明する。併せて、がんワクチンの開発にも注力しており、「がん治療効果の高い免疫チェック阻害剤との組み合わせ療法の開発を進めている」という。

 本業のワクチン開発に向けた取り組みの一方で、地元・菰野(こもの)町の名前の由来となったイネ科の沼沢植物「マコモ」に着目し、マコモ由来の健康食品の開発なども手がけている。マコモには血圧抑制、血液浄化や免疫力強化の作用があるといわれてきた。バイオコモは「地元つながり、免疫つながり」(福村社長)でマコモを研究し、その免疫活性化の原因物質を突き止めた。現在、三重大学、三重県工業研究所、三重県産業支援センターなどとコンソーシアムを組み、健康食品、機能性表示食品、化粧品など一連のヘルスケア商品の事業化を検討中。地域活性化にも一役買おうとしている。

 創業からこれまでの歩みを、福村社長は「ワクチンとの恋愛は山あり谷ありだった」と振り返る。これから先も山も谷も待ち受けていると見ているが「2、3年で国内外の製薬会社などへの導出(開発成果物の権利譲渡)にめどをつけ、グローバルなワクチンの実用化につなげたい」と、一区切りの時期が近いとも見通している。首尾よく事が運べば、免疫つながりのワクチンとマコモの「両手に花」を抱える日がやってくる。

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