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「老舗材木商が能登に里山工場を建て“新手”を放つ」

(16/10/06)

 北陸新幹線の開業から1年半余り。「東京での営業が日帰りでできるようになった」と顔をほころばすのは、加賀木材(金沢市)社長の増江世圭さん。増江社長は1900年(明治33年)創業の老舗材木商の5代目。同社は、この7月に百十数年の歴史上、初めてとなる工場を竣工し、操業を開始したばかり。工場ではヒバや杉を建築用木材として加工するほか、ヒバから抽出した油や水を原料とする消臭液、入浴液などの日用品の製造にも取り組む。「日用品のブランド名は決まっている。後は売り込むだけ」という状況で、増江社長の日帰り出張は激増しそうな雲行きだ。

 「今は金利の安さなどで、家が建ち、木材需要もそれなりに出ている。しかし、少子化の進展などを見通すと、これからはオリジナルで高付加価値な商材が欠かせない」。増江社長はそんな思いを形にすべく、能登半島の能登中核工業団地(石川県志賀町)に4億円を投じて『のと里山工場』を建設した。里山のネーミングには、地元のヒバや杉を有効活用することで、森林を守り、地域振興や環境の維持に貢献するとの意図を込めた。

 里山工場ではオリジナル&高付加価値品として三つを創り出していく。まず、杉の集成材に不燃加工を施した不燃木材『もえんげん』を量産する。「東京五輪のメーンスタジアムにも木が使われる」(増江社長)と、時代の風を読み、公共物件や商業施設の需要を掘り起こす。二つ目が特産の能登ヒバの加工品。能登ヒバに含まれる天然成分「ヒノキチオール」には、抗菌、防虫、消臭・防臭といった有用な作用がある。その特性を生かし、内装部材など建築用木材を生産し、広く供給する考えだ。

 さらに、能登ヒバの有用成分を含む水と油を抽出して、消臭液や入浴液をはじめとする各種日用品も製造する。「ブランド名は『NOTO HIBA KARA』。年内には発売する」(同)と、商品化の詰めを急いでいるところだ。併せて、大学との産学連携プロジェクトとして、能登ヒバ有用成分の研究開発にも取り組んでいる。「タイミングを見て、アジアでも広めたい」(同)とブランドの国際化も視野に入っている。

 同社では昨年6月、金沢市内に『子育て支援・木育カフェ』をオープンした。能登ヒバでつくった“木の玉プール”など、幼児が遊べるキッズスペースを設け、母親には木が醸し出す住空間の豊かさ、心地よさを満喫してもらおうといったカフェである。盛況の毎日が続き、店名に示した子育て支援で大きな役割を果たしている。初の工場建設、日用品への進出、子育て・木育カフェ…。老舗材木商の5代目は、築き上げた信用・信頼の上で、“新手”を次々とひねり出し、未来へとつなげていく。

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