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技術×デザインでモノづくり中小企業に新テイストを注入

(16/09/01)

 エレベーターと自動車。あまり共通点がないようにも思える両者を、デザイン会社、ファシオネ(札幌市)の登豊茂男社長は“似た者同士”と捉えている。「どちらも同じ乗り物で、機械、電気をはじめ、さまざまな技術の集積から成り立っているところも共通する」とそのわけを説明する。この二つの乗り物を通して技術とデザインを学んだ登社長は、身に着けた知見を全国各地のモノづくり中小企業に“注入”し、中小企業のモノづくり2・0へのステップアップに一役買っている。

 ファシオネは、大手エレベーター会社の技術者として20年間、国内外の各種エレベータープロジェクトに携わり、退社後、イタリアのカーデザイン事務所で修業を積んだ登氏が2009年に設立した。技術に精通する一方でデザイン力も備える工業デザイナーの目線から、企業とくに中小企業の技術/デザイン開発をサポートし、ユニークな新製品につなげる。こうした事業目的のもと、今日まで多種多様な製品づくりに関わってきた。

 太さの違いで色分けされ一目でどの太さかが分かる注射針、斬新なフォルムと鮮やかな色彩が目を引く農業機械、LED(発光ダイオード)の暖かな光に包まれる照明器具…。いずれも従来品とは一味違うモノづくり2・0のテイストを醸し出している。また、今年1月の「札幌モーターショー」で話題を呼んだ寒冷地対応EV(電気自動車)も、登社長が車両製作を統括するPM(プロジェクトマネージャー)として深く関わった。

 同EVは北海道内の中小企業が結集しプロジェクトチームを立ち上げて研究開発に取り組んだ。暖房効率を高めるため車体に断熱加工を施し、車体下部には雪氷付着防止の仕組みを採用するなど、北国・雪国ならではの創意工夫を数多く盛り込んだ。「モーターショーでは大変な人気で、現金を持って購入したいと言ってくるお年寄りもいたほど」(登社長)。ただ、まだ最終的な商品化の段階には至っていないということで、暖房周りなど一部機能の“切り売り”から事業化する意向だ。

 登社長は「地域企業と連携事業を構築し、成果物をミラノサローネへ出展させる」とのビジョンも描いている。ミラノサローネとは、イタリア・ミラノで開かれる世界最大規模の国際見本市。寒冷地対応EVのようなプロジェクトの横展開を図り、世界に通用する製品開発を全国各地で成し遂げようというものだ。「例えば海事都市・尾道でプレジャーボードを製造するのはどうでしょう」と具体例を挙げる。エレベーター、自動車、プレジャーボートと、あくまで乗り物にこだわるのが“登流”のようだ。

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