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宮城・女川で新エレキギターを製造

(16/08/25)

 「70年もの間、ほとんど変わらず昔のまま。自動車で言うと、クラシックカーが今でも創られ、使われているイメージです」。セッショナブル(仙台市)の梶屋陽介社長は、同社が関わる業界と取扱製品の旧態依然ぶりを、クラシックカーを例に挙げ説明する。そんな分野ならニューカマーにもチャンスは十分にあるはずと新規参入を果たし、近く開発製品の第一弾を世に出す運びにある。「まず米国から開拓し、続いて、アジアや国内市場を掘り起こす」(梶屋社長)と、業界イノベーターの眼差しは世界のマーケットを見据えている。

 梶屋社長がクラシックカーを引き合いに出して説明した、その製品はエレキギター。先端のテクノロジーを採り入れ、日々、進化しているように思えるエレキギターだが、実は昔ながらのデザインや製法そのまま踏襲されており、世界のギターは大手3メーカーの5種の製品群に集約される状況が続いているという。梶屋社長は、そのいずれにも当てはまらない“第6のギター”の普及浸透を目指す。

 同社は2014年、それまで東京・御茶ノ水の大手楽器店に勤めていた梶屋氏が設立。「もともと30歳で起業をと思っていた」というプランを実践した。まず、仙台市にギター専門店をオープンし、今春には宮城県女川町にエレキギター工房を開設。現在、試作づくりから製品づくりへの移行過程にある。鹿児島県の種子島出身の梶屋氏が東北に拠点を構えたのは、東日本大震災の直後から復興支援に携わってきたため。被害甚大な女川町の須田善明町長と意気投合し、新生・女川の一助になればと商店街の一角にギター工房を設けた。

 同工房では、東北産の木材、新合金による金属パーツ、宮城県気仙沼で受け継がれる宮大工の伝統技術、それに革新的デザインを採用するなど、素材、製法、デザインの各面すべてが斬新な“第6のギター”を製造する。「音の振動性が高まる一方で、振動の減衰率が低くなり、鮮明かつ厚みのある音を得られる」(梶屋社長)と機能面でも新しい。そんな革新的製品は成熟した市場から立ち上がると見て、まず米国市場を深耕し、次いで国内および市場が急拡大中のタイ、インドネシア、マレーシアなど東南アジア各国で販売する計画。

 楽器店でエレキギターを月に100本販売するなど“伝説のセールスマン”として活躍した梶屋社長は、その経験からユーザーを熟知し、また、ミュージシャンをはじめ幅広い人脈を築いている。そこで、女川にミュージシャンを招いてイベントを開催するなど、地域とギター・音楽に関するさまざまな活動に関わっていく意向で、梶屋社長は「文化的な豊かさ、豊かな日常をテーマとする事業を進めたい」と話す。日本政策金融公庫や石巻信金、三菱商事復興支援財団の支援も得た同社が、多くの支援者たちと社名に示すセッションをどう繰り広げていくか…。リードギターを弾く梶屋社長の腕の見せ所である。

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