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水素ブームを捉え「女神の前髪」つかんだ大学発ベンチャー

(16/08/18)

 水素をエネルギー源とする「水素社会」、健康にも美容にも役立つ「水素水」に「水素風呂」…。何かと話題の「水素」に商機あり、と見て、大手からベンチャーまで多種多様な企業が水素ビジネスに参入している。M&Kテクノロジー(東京都八王子市、城倉祐太郎社長)もその一社。「大学での研究テーマが水素で、水素ビジネスの可能性に気づき、舞い込んできた起業のチャンスに飛びついた」(城倉社長)という大学発ベンチャーは、水素ストーブの事業化など斬新なプランを引っ提げて、発展途上の水素市場を掘り起こす。

 同社の創業は2014年6月。当時、神奈川工科大学修士課程で学んでいた城倉社長が、神奈川工大発学生ベンチャーとして、指導教官らと共に立ち上げた。城倉社長は学部卒業論文のテーマが「水素を燃料としたガスストーブの研究・開発」、修士論文が「小型水素ガス発生装置の開発に関する研究」と、一貫して水素に取り組んだ。たまたま、起業の話を持ちかけられ、「若いうちしかできないことかもしれない」(同)と決断し、今日に至る。

 主力製品の水素発生器は、固体高分子膜を用いた水の電気分解法により水素を発生させる装置。「小型ながら“本物の水素”を取り出せるのがウリ」(同)で、修士論文の研究成果を反映させた。市場には水素と酸素の混合ガスを発生させるような装置が少なからず出回っており、本物の水素=水素100%は十分強みになるとのこと。実際、医療機関向けなどの販売実績が積み上がり、力を入れている各種展示会での売り込みでは「水素というだけで注目され、オーダーメイドの装置を作って欲しいといった注文も少なくない」(同)。

 水素発生器で生成した水素は、飲用の水素水や、水素風呂の“入浴剤”として使われるほか、水素水注射・点滴といった用途も出てきている。同社ではこれらのニーズに応える一方で、水素を燃料とする水素ガスストーブの事業化も目指している。同事業は城倉社長の卒論テーマの延長線上に位置するもので、CO2(二酸化炭素)を出さず環境に優しい水素ストーブを作製し、特に、ハウス栽培の暖房用など農業関連の需要を開拓する。

 城倉社長は学生時代、交通事故でICU(集中治療室)に入るほどの大けがをする。就職活動もままならず、一方で、水素ブームが巻き起こったことから「もともと経営に興味があり、まず就職し、40歳ぐらいで独立できればと考えていた」(同)というプランが変更され、少壮気鋭の起業家が誕生する。『幸運の女神、チャンスの女神に後ろ髪はない』といわれる。水素ブームを好機と捉え、女神の前髪をつかんだ城倉社長は、水素技術で未来(M)と環境(K)を考える「M&Kテクノロジー」を前へ前へと進めていく。

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