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老舗4代目、稀少竹材を活かし高知にネット繁盛店築く

(16/08/04)

 時間と場所を超えるインターネットは、地方発のネット繁盛店を数多く輩出する―90年代半ば、ネット販売が本格化した当時、“地方の復権”が大いに喧伝された。しかし、それから20年たった今、「地方創生」の必要性が声高に叫ばれるように、復権はほとんど進んでいない。そんな中でも、気を吐く地方発ネット店は確かに存在し、その代表格といえるのが竹虎(高知県須崎市、山岸義浩社長)だ。「ネットがなければ15年前になくなっていた会社」(山岸社長)は、老舗4代目の舵取りが冴えわたっている。

 竹虎は明治27(1894)年、山岸社長の曽祖父が大阪で竹材商として創業し、太平洋戦争の大阪空襲から四国・須崎に移る。須崎には日本で唯一、虎の横縞のような模様が付いた虎斑竹(とらふだけ)が生育するのが、移転した大きな理由。虎斑竹の竹材や、草履、竹かご、竹炭など竹細工を製造販売し今日に至る。その竹虎がホームページ(HP)を開設したのは1997年のこと。当時、竹製品の市場は縮小の一途で、安価な中国製品が大量に流入するなど、二重苦、三重苦の中、「藁をもすがる思いでHPを立ち上げた」(同)。

 しかし、3年間で売れたのは300円の商品が一つだけという惨憺たる始末。それが「あんた、ネットで買い物しているか」と、ある勉強会で講師から尋ねられたひと言をきっかけに様変わりする。ネットでの買い物経験が乏しければ、ユーザー目線のネット店をつくれるわけがない。当たり前のことに気付かされた山岸社長は買い物をしまくって、各店のいいとこ取りをしたリニューアル店をオープン。その店が今では「売れ過ぎるとあちこちに無理が生じるので、売り上げを抑えている」(同)というほどの繁盛店に育った。

 数多くの取扱商品が、価格帯別、シーン別(中元・歳暮、結婚祝い…)など、ユーザーが買い物しやすいように分類され、クリアな写真の各商品は一目で特質が分かる。週間人気ランキング、今月のお勧めをはじめとする多彩なコンテンツ。毎日更新される「竹虎4代目(山岸社長)ブログ」にメルマガ、フェイスブック、ツイッター…。大量、高頻度、バラエティー豊か―の3拍子揃った“ビッグデータ”的な情報発信が日々、行われている。

 竹虎では、外装も内装も虎斑竹で覆い尽くした竹尽くしの電気自動車「竹虎自動車」をクラウドファンディングで製作し、8月1−11日、高知から横浜まで走行するといった“コトづくり”にも力を入れている。「ネットは変化が速いので日々勉強」という山岸社長は、朝5時に出社しブログを書くなど努力を惜しまない。竹屋に生まれ、子供の時から慣れ親しんできた竹に対する愛情と、3年間で売り上げ300円という忘れられないネット体験が、老舗4代目を前へ前へと突き動かしている。

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