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ダンボール+折り紙工学で最強の防災用帽子を開発

(16/07/14)

 千羽鶴で知られる折り紙は、日本古来の遊び、工芸の一方で、先端の折り紙工学といった顔も持つ。折り紙ならではの軽さや強さ、展開収縮性を産業に役立てようというのが折り紙工学の趣旨。その可能性に着目し、折り紙工学の第一人者と共同研究を進め、成果を生み出しているのが秦永ダンボール(神奈川県伊勢原市、小澤範雅社長)だ。共同研究の成果の一つが、ヘルメット並みの衝撃吸収が可能で、落下物に対する強度はヘルメットより高いというダンボール製の防災用帽子。この“最強の帽子”はNHKの人気番組「超絶 凄ワザ」で取り上げられ、日本版イグノーベル賞を受賞するなど話題性にも事欠かない。

 秦永ダンボールは昭和38年(1963年)設立のダンボール製品メーカー。2代目社長の小澤氏はかねてより産学連携による研究開発に力を入れている。「一般に中小企業は応用や実用化は得意だが、基礎研究、アカデミックな研究は不得手。その不得手なところにチャンスがあり、また、そこに目を向けることが事業のブレークスルーにつながると考えた」(小澤社長)という“逆張り”の発想は、「水に強く燃えないダンボール」を産業総合研究所と共同開発するなど確たる実績を収めている。

 今回、折り紙工学の権威、萩原一郎・明治大学特任教授と取り組んだ“最強の帽子”プロジェクトは、東日本大震災などを踏まえ、コンパクトに畳めて持ち運びが容易で、地震時などの落下物に対する安全性も担保する実用性の高い防災用帽子を開発しようというもの。「水に強く燃えないダンボール」素材と最新の折り紙工学の融合が、衝撃吸収や強度がヘルメットに勝るとも劣らない、300グラムと軽く、折り畳めて枕元などに常備できる…など、多くの特徴を備えた新製品に結実し、この6月、発売に至った。

 今年2月、3月の2回にわたって放映されたNHK「超絶 凄ワザ『最強の帽子対決』上・下」では、秦永ダンボールが6月に発売した防災用帽子の原型が、大手化学メーカー製の帽子と対決し、見事、勝利した。また3月の第11回日本版イグノーベル賞では同帽子が「ものづくり部門ダンボール賞」に輝いた。これらの“勲章”が、防災用帽子の拡販に大いに寄与するのは間違いない。

 小澤社長は、産学連携の取り組みについて「互いに尊重し譲歩し合いながら、同じ終着点である必要はないことを都度理解し合う作業が重要」としたうえで「大げさかもしれないが、ここに日本の中小企業の生きる道がある」と、その意義を高く評価する。併せて「大企業(が頂点)のピラミッドから、中小企業のピラミッドを創るモデルとなりたい」とのビジョンを示す。どうやら、最新の折り紙工学から、伸縮自在で機能性に富むピラミッドの創り方も学び取ったようだ。

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