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スローが売り物、低速EVで自動車新時代に名乗り

(16/07/04)

 「キーワードはSlow(スロー)。スローをテーマにした新しい電気自動車(EV)を製造販売している」。自動運転車や超小型モビリティーなど、自動車の既成概念を覆すような車が話題となっている折、自動車=高速走行の常識の逆を行く“低速走行”を売り物とするEVが登場した。シンクトゥギャザー(群馬県桐生市、宗村正弘社長)の「eCOMシリーズ」で、宗村社長は最高時速19kmのEVによる新交通システムの普及に挑んでいる。

 同社は、大手自動車メーカーで長年、設計・商品企画に携わった宗村氏が、9年前の平成19年に設立した。55歳の起業で、当初は、社名が表すように「(クライアントと)共に考える商品開発コンサルティング業」として発足する。ある時、宗村社長は知り合いの群馬大学教授に頼まれ、群馬大次世代EV研究会の車両分科会長に就く。同研究会でボランティア的な活動を進めるうちに、同社の事業は「当初の目的から外れて自然の流れに乗ってEV製造に至った」(宗村社長)。

 同社製EVの第1弾として5年ほど前に商品化したのが、10人乗り小型EVバス「eCOM−8」だ。時速19km以下、観光地巡りに最適といった乗り物で、地元・群馬県みなかみ町の水上温泉をはじめ、観光地の需要を掘り起こしている。高齢者など“買い物弱者・難民”のための買い物支援EVとしての実績も出ている。ちなみにネーミングの「8」は、八つの車輪を八つのモーターで動かす8輪駆動に由来する。

 eCOM−8に続くシリーズ第2弾として、昨年開発したのが2人乗りEVの「eCOMミニ」。「8」と基本コンセプトは同じで「8の使われ方を観察し、潜在ニーズがあると直感して製作した」(同)。ミニは観光地などで見かけるタンデム自転車のEV版のようなもので、同社では来春をめどに関東圏を中心に、レンタル方式による「eCOMレンタ」を立ち上げる。現在、提携先や協力事業者を広く募っているところだ。

 最大時速19kmでは後ろを走る車は、たまったものではない。そんな懸念も頭に浮かぶが、同社では、実証実験で一定の理解が得られたといい、観光地をはじめ特定地域での普及の可能性は十分にあると捉えている。宗村社長は「環境、観光、高齢化。三つのKから見いだした共通キーワードがスロー」とeCOM誕生の背景を説明し「大手メーカーと違って、顧客の目的にぴったりの車両をつくれるのが当社の強み」とベンチャーならではの優位性を強調する。果たして、低速EVが自動車新時代の一角に食い込むか…。

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