e中小企業コラム
「e中小企業コラム」一覧へ

衛星画像の利活用で未開の市場を開拓する

(16/05/19)
 “宝の山”の衛星データを有効活用しない手はない−その一念から、起業し、関連ビジネスを推し進めているのが、CBMIホールディングス(東京)の小野雅弘社長だ。長年、大手電機メーカーで、宇宙開発・衛星事業に携わり、海外の動向にも精通している小野社長は「日本にはなかったビジネスで、それゆえチャンスがある」と、未開の市場開拓に自信をのぞかせる。
 人工衛星には通信衛星、軍事衛星、観測衛星をはじめ、さまざまな種類がある。そのうち同社が関わるのは、観測衛星の一つで、JAXA(宇宙航空研究開発機構)が運用している陸域観測技術衛星「だいち」。だいちの衛星画像をベースに、過去〜現在の情報を積み重ねるなどで、地図ならぬ「知図」を作成し、防災・減災、農業支援、インフラ施設の老朽化監視から旅行・観光のナビ&コンシェルジュサービスまで、多種多様な用途に「知図」を役立てるのが同社事業の眼目となる。
 同社は平成20年に小野社長が立ち上げた。大手電機メーカーに在籍し国内外の衛星関連の仕事に従事してきた小野社長は、欧米各国で、民間企業が衛星画像を2次加工し、例えばワイン用のぶどうの栽培に生かすなど、広く利活用しているのを目の当たりにする。日本でもやれないものか。勤めていた会社に掛け合ったところ、色よい返事は得られず、「よし、それなら自分でやってしまおう」と同社設立に至った。
 今日、同社の「知図」とよく似た地図情報として米グーグル社のグーグルマップが広く普及し、ある種のデファクトスタンダード(実質的標準)の地位を確立している。「知図」に、出る幕はあるのか。対グーグルに関して小野社長は「当社はワンストップでソリューションを提供でき、価格はグーグルマップの半値」と優位点を強調し、ユーザー獲得へ自信を示す。フリー(無料)が基本のグーグルは、逆に、特定の目的に適応するためのカスタマイズ費用は安くはなく、そうした点から競争力は十分ということか。
 現在、進行中あるいは立ち上がりつつあるプロジェクトとしては、農水省が打ち出したスマート農業(ロボット技術やICTを活用して超省力・高品質生産を実現する新たな農業)に関する取り組みなど、行政関連の案件が出てきている。「BtoG(対政府・自治体)のプロジェクトを軸足に、BtoB(対企業)にも力を入れていく」(小野社長)という同社には、ビッグデータやIoT(モノのインターネット)の普及が追い風となる。「だいち」のように、事業が軌道に乗る日はそう遠くないようだ。
〔当サイトのコンテンツは中小企業庁・中小企業基盤整備機構の許可を得て掲載しています。〕
Copyright(c) Organization for Small and Medium Enterprises and Regional Innovation, Japan All rights reserved.
Copyright 著作権マーク SEIKO EPSON CORPORATION , All rights reserved.