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AI将棋で培った技術・ノウハウを横展開

(16/04/14)

 先月、АI(人工知能)「アルファ碁」が史上最強棋士といわれる韓国イ・セドル9段に完勝した。世界を駆け巡ったこのニュースは、世界中の人たちにAIのすごさ、可能性を再認識させた。AIのすごさや可能性を十二分に理解し、AIに照準を合わせた事業展開を図っているのがHEROZ(東京、林隆弘社長)。同社の“財産”はAI囲碁ならぬAI将棋で培った技術・ノウハウの数々で、その財産をゲームはもちろんフィンテックやヘルスケアの領域でも活用中。AIベンチャーの旗手ともなる同社の存在感は高まるばかりだ。

 同社は大手IT企業に勤めていた林社長が、7年前の平成21年に退社、創業した。もともと独立志向が強かったところに「その当時、iphoneやフェイスブック、ツイッターが登場し、世界規模で地殻変動が起きていると実感した」(林社長)のを機に起業に踏み切った。会社勤めの時から、モバイルコンテンツやソーシャルアプリを制作、手応えを感じていたのも独立の一因で、「時来たる」とばかり、HEROZを立ち上げた。

 設立当初、モバイルコンテンツやソーシャルアプリを手がけ、数年で黒字化した。新機軸を打ち出そうと自社のSWOT分析をした結果、浮上したのが「将棋」。林社長はアマチュア将棋全国大会で優勝するほどの強豪で、その関係からAI将棋のトップクラスの開発者らとも親しかった。そこで、スマホ用オンライン対局ゲーム「将棋ウォーズ」を開発し、平成24年に事業化した。最強AI将棋ソフト「Ponanza(ポナンザ)」と対局できるなど、将棋ファンを引き付ける魅力が満載で、あっという間に利用者250万人を超える人気ゲームに育った。

 同社には、AI将棋開発者をはじめAIの研究開発者たちが多数、入社している。その頭脳集団から、AIチェスやAIバックギャモンが生みだされた。また、証券会社との協業によりAIフィンテックを実用化した。未病対策・予防医療に役立つAIヘルスケアの商用化も間近に迫っている。これから先、“HEROZ発”の各種AIシステムが、第3次AIブームの追い風を受け、国内外のさまざまな領域に広まっていきそうだ。

 『何事も一番を目指す』−同社が行動指針でうたうNo1志向は、林社長の信条とも重なる。子供の時から将棋の才能に恵まれ、プロ棋士を目指したこともある林社長は、ある時、棋界の最高峰、羽生善治名人と対局する機会を得る。同対局で、羽生名人に「金」をタダで捨てる鬼手を指され驚愕する。「人間業とは思えない手で、どんなに頑張っても届かない人だと分かった」(林社長)。以後、プロ棋士への道はきっぱりと断念、ビジネスの世界を邁進する。その対局のインパクトが強烈だったためかどうか、同社が掲げるビジョンは『驚きを心に』。世界を驚かすAIシステムを次々と世に出そうとしている。

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