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攻勢に向かう必要条件とは
(16/03/31)

 景気動向に一喜一憂しながら、必死に生き残り策を模索する。中小企業だけではなく経営者なら誰もが抱く宿命≠ニいえるだろう。その中でも厳しい局面に立たされがちなのが受注産業だ。それでも、暗くなりがちな社内の雰囲気を明るくする努力を怠らず、アイデアとIT(情報技術)を駆使して、発注先だけに頼らず自らの力で市場の開拓に挑む中小企業がある。

 守りから攻勢に向かう必要条件は、社員のモチベーションの高さから生じる企業活力。それを可能にするのは、社員を大切にする経営者の考え方にあると思う。社員が喜んで働く職場には、会社に対する誇りがあり、きつい時期も一緒に乗り越えようとするエネルギーが湧き出る。これが強さの秘訣なのだろう。

 福岡県飯塚市に本社工場を構えるタカハ機工は、創意工夫で社員のやりがいを見いだし、高い技術力を多彩な展開で市場へ浸透を図っている。扱う製品は一般消費者が意識しない「ソレノイド」という電気部品。モーターのような形だが、中心にある鉄心が回転ではなく直線運動する。コピー機、自動ドアの開閉など身近な製品に使われているのだが、それを知る人は少ない。

 同社は典型的な受注企業。「頼りの発注先が中国へとシフトし、米国現地法人を撤退。国内も同様に厳しかった。リーマンショック時は危機的な状況に陥るなど倒産の危機は何度も経験した」と大久保泰輔代表取締役社長は下請の厳しさを語る。この状態を脱却するには、自ら市場を開拓することが近道。在庫リスクも恐れず、小ロットの注文を受け付けるネット販売を開始した。「1個でも丁寧に梱包して送ることを徹底し、今は海外を含め、年間を通し注文が入らない日はない」という。

 社員が楽しく仕事ができる環境を作るため始めたのが、トイレを超豪華にすることだった。季節ごとの遊び心を盛り込んだ飾りも評判を呼び、メディアにとり上げられ注目を集める。3年前にソレノイドを使った機械のアイデアを募るソレノイドコンテストを始めた。参加者たちが作品をネットにアップするなど大きな盛り上がりも見せ、知名度向上にもつなげている。「職場環境、社会貢献で九州一の企業になる」ことが目標という。経営者の本気度が見えた。

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