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食品の異物混入防止に役立つLED付きコンベア
(16/03/07)

 一時期、外食や食品への異物混入が相次ぎ社会問題となった。製造業者は細心の注意を払っているが、それでも100%防ぐのは難しいようだ。通常、異物検査は、工場のライン上を流れる食品を金属検出やX線照射のほか、目視で検査するケースが多いが、目視の場合、異物によっては見えにくいこともある。そんな課題を解決する技術を開発したのが、食品工場向けステンレスコンベア製造のサムテック・イノベーションズ(岡山県津山市)だ。

 同社の高本智仙代表取締役は、北九州市で運搬機械販売などをしていた父親の事業を継いだが、それが不調となったことで、知人の誘いもあって津山市でベルトコンベア設計・製造会社を平成21年に創業した。高本氏も「知らなかった」というが、津山市はステンレス製造大手を中心として、その周辺の加工業者が密集する地域。高本氏は工業デザインを経験し、食品工場の衛生管理のためコンベアベルトを毎日洗浄できるシステムを考案し、昭和63年に実用新案を取得していた。こうした経験もあり、ステンレスコンベア製造に特化し、食品大手との取引にも成功するなど経営は軌道に乗った。

 高本氏が食品への異物混入に注目したのは、これまでの蛍光灯や白色ランプを使った目視検査では限界があったこと。つまり、検査対象や異物に対して照射する光の色が重要と考え、対象物によって光の色を変化させられる高輝度のRGB3色LED(発光ダイオード)を用いた高輝度の照明器具付きコンベアの開発に乗り出した。これが県の経営革新計画に認定されたことをきっかけに、26年には国の新連携事業計画などにも採択された。

 この技術で特許を取得し、昨年には大手設備メーカーと契約して、ユニット供給を始めた。東京や大阪の展示会に出展したところ、海外からも引き合いがあり、この6月には台湾の食品工場にコンベアを納入予定という。日本で販売されている量産食品の生産地はアジアが主流のため、「海外に出ていくしかない」と高本氏は強調。将来的には日本からLEDユニットを供給し、台湾でコンベアに組み立てて、タイやインドネシアなどアジア諸国に拡販したい考えだが、「中枢部の製造は必ず日本に残し、雇用は守る」という。

 高本氏によると、色彩学という学問はあるが、光の色が人に及ぼす影響に関する研究はないという。例えば、工場内の壁をある色にすると、工員の疲労感が軽減されるなどの効果がある。3色LEDの応用範囲は、食品コンベアだけでなく、手術室の無影灯、自動車用ライトなど「まだまだある」としている。同社が食品コンベア専業から脱皮する日も近いようだ。

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