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教育ベンチャーが国内外の新市場切り開く
(16/01/28)

 教育のニッチ(隙間)マーケットに着目し、急成長を遂げているベンチャー企業がある。すららネット(東京、湯野川孝彦社長)で、同社では、「競合が現れていない」(湯野川社長)というニッチ&ブルーオーシャン(競争のない未開拓市場)を切り開きつつある。その市場とは、これまで“盲点”ともなっていたような、低学力の子どもたちを救い上げる分野。格差に挑むソーシャルベンチャーの色合いも持つ同社の教育事業は、今、アジアをはじめ海外にも広がって、ニッチがマスへと転換しそうな勢いだ。

 同社は、湯野川社長が平成20年(2008年)に立ち上げた。湯野川社長は、それまでフランチャイズ事業などを手掛ける企業に籍を置き、教育事業立ち上げの陣頭指揮に当たっていた。諸般の事情から、そのまま事業を継続することが困難になったため、MBO(マネジメント・バイ・アウト=事業部門のトップが当該部門の事業譲渡を受けたりして独立すること)による教育ベンチャーの発足に至った。

 創業時から取り組んでいるのが、パソコンやタブレットを活用する、いわゆるeラーニングの教育事業で、小学校高学年から高校生までを対象に、科目は英、数、国の三つに絞り込んでいる。各教材は「学習意欲を高めるために、アニメのキャラクターが、(答えが正解、不正解で)ほめたり残念がったりするインタラクティブなコンテンツ。できなかったら、より易しい問題を出題し、みんなが成功体験を得られるようにしており、特に学力の低い層の学力アップで成果を上げている」(湯野川社長)。

 学習塾の運営、eラーニング教材の提供といった教育ビジネスの多くは、できる子を、さらに伸ばすのをメーンターゲットにしてきている。そのため、低学力の底上げを図る取り組みは手つかずに近く、同社が新市場を開拓した格好だ。同社の教材は、これまでに約600の学習塾、85の学校に採用され、3万2000人が利用。1000塾、100校、5万人の大台乗せも射程に入っている。さらに「インドネシアやスリランカでeラーニングの寺子屋をジャイカ(国際協力機構)などと始めている。先生の質を問わないeラーニングは発展途上国、新興国でも大きな可能性を感じる」(同)。

 湯野川社長は、ビッグデータや人工知能、音声認識技術の利活用によって、現行システムを次世代教育システムへと進化・発展させる青写真も描いており、「ベンチャーならではの“ノリ”で、世の中にないものをやっていきたい」と意気込む。所得格差が学力格差につながると喧伝される今、同社には格差を是正するソーシャルベンチャーとしての活躍も期待される。「将来的には世界中の子供たちに低料金で高品質な教育を施せるようにする」との同社のビジョンは、ノーベル平和賞受賞のマララ・ユスフザイさんの思いと、ぴったり重なり合う。

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