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デジタルの新風で、建築現場に“上手な段取り”もたらす
(16/01/21)

 もともと歌舞伎の楽屋用語で、芝居の筋や構成の運びを意味する「段取り」が、広く使われるようになって久しい。「段取り八分、仕事二分」と、事前の準備の大切さを説く言い回しもある。そんな段取りに着目して、建築現場での段取りづけを事業化し、躍進中なのが、その名もダンドリワークス(大津市、加賀爪宏介社長)。「リフォーム業に携わっていて、なぜ、毎日、バタバタと忙しいのだろう。もっと効率よく仕事を進められないものかと悩み続けた末に、ひらめいた」(加賀爪社長)という仕組み=ダンドリワークによって、建築関連各社の段取りの改善、つまりは仕事の合理化・効率化を強力にプッシュしている。

 同社は、平成25年(2013年)に加賀爪社長が立ち上げた。リフォーム業などの経験を通して、建築現場におけるさまざまな面での段取りの悪さや非効率、不便さを実感。そこに商機があるはずと見定めて、建築業向けクラウドサービスとなるダンドリワークを開発し、普及に乗り出した。アナログな建築業界にデジタルの新風を吹き込み、現場の業務改善をビジネスにしようというものだ。

 元請会社からFAX、eメール、手渡しと種々の経路で、建築現場を担う職人に工程表や図面、写真を送る−こうした従来方式では、現場作業に大きな支障を来す伝達ミス、送信ミスなどのヒューマンエラーが往々にして生じてしまう。それらを解消するのがダンドリワークで、クラウド上での情報共有を実現し、発注管理、請求管理、工程表作成といった諸機能も備えている。問題は、ベテラン職人をはじめ“アナログ人種”が多い業界に、クラウドサービスに欠かせないパソコン、スマホ、タブレットをどう浸透させるかだ。

 同社は浸透策として「説明会で導入のメリットを説くという“接近戦”」(加賀爪社長)を採用した。説明会は全国各地で200回以上も開催。その作戦が奏功し、すでに、導入企業は百数十社に達し、職人の数では1万4000人に行き渡っているという。もちろん、ダンドリワークの“質の高さ”も、普及が進んだ大きな要因。これまで、IT系企業などが同様のシステム、サービスを投入しているが、大半は撤退を余儀なくされている。「現場レベルに落とし込めていない」(同)ためで、その点、現場を熟知し、ユーザー目線から編み出した同社のシステム、サービスが受け入れられたのは、うなずける。

 同社では今後のビジョンとして、340万人の職人(技能労働者)をターゲットに、ダンドリワークスを広く普及させる一方で、副産物となる職人データベースを活用した各種の物販、保険業務や人材マッチングなどの事業化も計画している。例えば、職人たちの消耗品をネット通販するといった企画である。段取りの専門家集団が、段取り良く事を進めたあかつきには、たくさんの果実を手にするようだ。

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